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労働契約の終了形態 -その内容をご説明しますー
4月からスタートした2024年度もあっという間に2か月が経過しました。4月以降に新入社員を迎え入れた会社は数多くあるかと思いますが、新入社員の方は職場に慣れはじめ、現時点におけるパフォーマンスをしっかりと発揮できておりますでしょうか。
一方、新入社員が既に退職してしまったというケースも少なくはないかと思いますし、もし、そのようなケースにあたってしまっていた場合、どのように退職しましたでしょうか。
「話合い」、「突然来なくなった」、「退職代行業者から電話があった」等、様々なものがあるかと思います。そこで今回は、労働契約の終了形態について、その内容を解説させて頂きます。
3つの区分と5つの終了形態
ご存じの通り、労働契約は労働者と使用者と当事者間の合意によって成立します。そのため、労働契約が終了する場合も、この当事者をベースに考えることになります。
1.3つの区分
労働契約の終了形態は、大きく3つに分けることが出来ます。1つ目は、「合意に基づく解約」、2つ目は「当事者の一方からの解約」、3つ目は「その他」となります。これら3つの区分の中により詳細な終了形態が存することとなります。
2.5つの終了形態
次に、上記3つの区分には、どのような終了形態があるのか、区分ごとに見て行きたいと思います。
(1)合意に基づく解約による労働契約の終了
はじめに、合意に基づく解約による労働契約の終了形態を見てみたいと思います。これには、「合意解約」と「退職勧奨」があります。
イ 合意解約
「合意解約」は、合意により締結された労働(雇用)契約を、当事者間の合意により解約するものであるため、労働契約の終了時にトラブルが発生する可能性も極めて低いと思われます。また、注意点として、稀に「辞めるのを止める」ということで、解約の申込みが撤回される場合がありますが、使用者の承諾(承認)の意思表示がなされるまでは、撤回が可能とされていますので、ご注意ください。
ロ 退職勧奨
「退職勧奨」は、使用者が労働者に対し、合意解約(又は一方的解約(辞職))としての退職を勧奨するものとなり、一般的に、退職勧奨が行われる場合には、割増退職金の支給等が行われる場合が多く見受けられます。退職勧奨は解雇ではないため、不況時の人員削減等で行われる場合であっても、整理解雇の四要件の適用はありません。また、半強制的ないし執拗な退職勧奨行為は不法行為を構成し、労働者に対する損害賠償責任を生じせしめるものとなります。
(2)当事者の一方からの解約による労働契約の終了
次に、当事者の一方からの解約による労働契約形態です。当事者の一方と言っていますので、各当事者目線で見る必要があり、使用者からの解約では「解雇」、労働者からの解約では「辞職」が該当することになります。
イ 解雇
「解雇」は、使用者からの一方的な労働契約の解除となります。労働者側からすると、使用者の一方的な権利行使(解雇権の行使)となるため、解雇に関するトラブルは多く発生しています。また、使用者が解雇を行う場合には、労働基準法に規定されている手続きを行う必要があるとともに、解雇理由としても「客観的合理性及び社会的相当性」が必要となります。そのため、解雇の手続きとして、法律上は問題ない場合であっても、裁判において解雇無効の訴えが提起された場合には、解雇が無効となる場合もありますので、注意が必要です。
ロ 辞職
使用者からの一方的な労働契約の解除である解雇に対し、「辞職」は労働者からの労働契約の解約となります。部下を持つ上司としては、「いやいや、それでは困る」、という感覚を持つ方が多いのではないかと思いますが、民法627条1項において「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」とされていますので、申し入れから2週間で解約(労働契約が終了)されることとなります。
(3)その他による労働契約の終了
最後にその他((1)及び(2)に該当しないもの)として「定年」が終了形態として挙げられます。定年に関しては、各社の就業規則に明記されているかと思います。また、現在では、定年再雇用と言うのが一般的になってきておりますので、是非一度、就業規則をご確認頂ければと思います。
労働契約終了時のトラブル防止のために
以上の通り、労働契約の終了形態には、多くのものがあります。単純に会社を退職するとみるのではなく、今回の退職と言う事象が、どのようなものに当たるのかを適正に見極め対応することが重要となります。
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Yoshito Matsumoto
HR Solution Division/Director and Business Manager Specified Social Insurance and Labor Attorney Social Insurance Labor Consultant Corporation EOS Representative employee Master of Comparative Law, Japan Labor Law Association After graduating from graduate school, he was a consultant at the Tochigi Labor Bureau and worked at a social insurance and labor attorney office in Yokohama, then joined EPCS.