コラム
育児休業の労使協定|除外範囲と2025年法改正対応の雛形
入社1年未満の従業員を育児休業の対象から除外したいという場合、労使協定を締結することで法的に可能となります。また、頻繁な法改正に自社の規程が対応できているか、といった悩みはありませんか。
この記事では、育児休業に関する労使協定で定められる除外範囲や、2025年4月施行の法改正に伴う変更点を解説します。
厚生労働省のひな形を基にした協定書の書き方も紹介しており、法的に有効な労使協定を適切に運用するための知識を得られます。
育児休業に関する労使協定とは?締結は企業の義務?
育児休業に関する労使協定とは、育児・介護休業法に基づき、事業主と労働者の代表者との間で締結される書面による協定です。
この協定の主な目的は、育児休業制度の申し出ができる労働者の範囲から、特定の条件に該当する労働者を適用除外とすることです。
労使協定の締結は法律上の義務ではありませんが、もし企業が特定の労働者を育児休業の対象から除外したい場合には、必ずこの協定を締結しておく必要があります。
協定がない場合、原則として全ての労働者が育児休業の対象となります。
では、具体的にどのような労働者を対象から除外できるのでしょうか。
労使協定で育児休業の対象から除外できる労働者の範囲
育児・介護休業法では、企業が労使協定を締結することによって、育児休業の申出を拒むことができる対象者を定めています。
この適用除外の対象となるのは、以下の3つの条件のいずれかに該当する労働者です。
これら以外の理由で、育児休業の取得を拒否することは法律で認められていません。
したがって、対象外としたい従業員がいる場合は、これらの条件を労使協定に明記する必要があります。
入社1年未満の労働者
労使協定を締結することにより、事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者からの育児休業の申出を拒否できます。
これは、入社後すぐに長期の休業に入ることで生じる業務への影響を考慮した規定です。
ただし、あくまで申出を拒否できるというだけであり、企業の判断で育児休業の取得を認めることは問題ありません。
人材定着の観点から、適用除外とせずに柔軟な対応をとる企業もあります。
申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
育児休業の申出があった日から1年以内に、その労働者との雇用契約が終了することが客観的に見て明らかである場合、労使協定に基づき申出を拒否することが可能です。
これには、契約期間の満了日が決まっている有期契約労働者などが該当します。
ただし、契約更新の可能性がある場合や、実態として契約が反復更新されている場合には、「雇用関係が終了することが明らか」とは見なされず、対象外にできない可能性があるため注意が必要です。
1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
週の所定労働日数が2日以下の労働者は、労使協定の定めるところにより、子の看護休暇の適用除外とすることができます。勤務日数が少ない労働者の場合、代替要員の確保が比較的容易であることなどが理由として挙げられます。パートタイムやアルバイトといった雇用形態に関わらず、所定労働日数がこの基準に該当するすべての労働者が対象となります。
ただし、これらの規定も法改正の影響を受けます。特に2025年からの変更点は注意が必要です。
【2025年4月施行】法改正で育児休業の労使協定は見直しが必須に
2025年4月1日から改正育児・介護休業法が施行されることに伴い、既存の労使協定は見直しが必須となります。
今回の法改正では、子の看護休暇や介護休暇の取得要件が緩和され、これまで労使協定によって適用除外とすることができた一部の労働者が、対象に含まれることになりました。
したがって、現行の労使協定をそのままにしておくと、法違反となる可能性があります。
速やかに協定内容を確認し、改正法に準拠した内容へ変更する準備を進める必要があります。
2025年人事労務関連の法改正については「2025年人事労務関連の法改正」で詳しく紹介しています。
子の看護休暇:勤続6カ月未満の労働者も対象に
2025年4月1日からの法改正により、子の看護休暇制度において、これまで労使協定で適用除外とすることができた「勤続6カ月未満の労働者」を対象外にできなくなります。
改正後は、勤続期間にかかわらず、全ての対象労働者が子の看護休暇を取得できるようになります。
もし現在の労使協定にこの除外規定が含まれている場合は、協定から該当部分を削除する修正を行わなければなりません。
この休暇制度の変更は、多くの企業にとって協定見直しの直接的な要因となります。
介護休暇:勤続6カ月未満の労働者の除外規定が廃止
子の看護休暇と同様に、介護休暇においても「勤続6カ月未満の労働者」を労使協定によって適用除外とする規定が廃止されます。
2025年4月1日以降は、勤続年数に関係なく、要介護状態の対象家族を介護する労働者は介護休暇を取得する権利を持ちます。
育児だけでなく介護に関する規定も見直しの対象となるため、育児・介護休業規程全体を確認することが重要です。
労使協定に介護休業や休暇に関する除外規定を設けている企業は、必ず見直しを行いましょう。
育児・介護休業法については「育児・介護休業法について」で詳しく紹介しています。
所定外労働の制限(残業免除):対象者の範囲が拡大
今回の法改正では、3歳に満たない子を養育する労働者が請求できる所定外労働の制限について、対象者の範囲が広がります。
これまでは、労使協定によって勤続1年未満の労働者や週の所定労働日数が2日以下の労働者を対象から除外できました。
しかし、2025年4月1日以降は、勤続1年未満の労働者も原則として残業免除を請求できるようになります。
なお、週の所定労働日数が2日以下の労働者については、引き続き労使協定によって対象から除外することが可能です。
企業の労務管理に直接影響する変更点であり、就業規則の見直しと併せて対応が求められます。
産後パパ育休(出生時育児休業)で労使協定が必要になる2つのケース
産後パパ育休(出生時育児休業)とは、子の出生後8週間以内に最大4週間まで、2回に分割して取得できる男性向けの育児休業制度です。
この比較的新しい制度においても、労使協定の締結が重要な役割を果たす場面があります。
具体的には、休業期間中の就業を例外的に認める場合と、取得対象者から一部の労働者を除外する場合の2つのケースです。
これらの措置を講じたい企業は、通常の育児休業に関する協定とは別に、産後パパ育休に関する取り決めを労使協定で定めておく必要があります。
休業中の就業を可能にする場合
産後パパ育休の期間中、労働者は原則として就業できません。
しかし、業務の引継ぎなどで一時的な就業が必要なケースも想定されます。
そのような場合に備え、事前に労使協定で「労働者が合意した範囲内で休業中に就業させることができる」旨を定めておけば、例外的に就業が可能となります。
ただし、就業させるには労働者本人との個別合意も必要であり、就業日数や時間にも上限(休業期間中の所定労働日数・時間の半分以下)が設けられている点に注意が必要です。
対象者から除外する労働者を定める場合
産後パパ育休においても、労使協定を締結することで取得対象者から一部の労働者を除外できます。
具体的には、「雇用期間が1年未満の有期契約労働者」や「1年以内に雇用関係が終了することが明らかな有期契約労働者」、「週の所定労働日数が2日以下の労働者」が除外の対象です。
通常の育児休業とは異なり、勤続1年未満の正規雇用労働者は除外できないなど、適用除外の範囲が異なるため、制度ごとの違いを正確に理解した上で協定内容を定める必要があります。
労使協定の運用で陥りがちな失敗と専門家を活用するメリット
育児休業に関する労使協定の運用では、度重なる法改正への対応遅れや、インターネットで入手したひな形の安易な流用による失敗が散見されます。
こうした問題は、従業員とのトラブルやコンプライアンス違反につながるリスクをはらんでいます。
EPコンサルティングサービスのような25年以上の実績を持つ専門家集団は、社会保険労務士法人EOSと連携し、法改正に迅速に対応するだけでなく、各企業の個別事情に合わせた最適な労務管理体制の構築をサポートします。
法改正への対応遅れが招く労務リスク
育児・介護休業法は、社会情勢の変化に合わせて頻繁に改正が行われます。
2025年の改正もその一環であり、協定内容の更新を怠ると、法律で認められなくなった従業員の申出を誤って拒否してしまうといった労務リスクが発生します。
このような法改正への対応遅れは、従業員との信頼関係を損なうだけでなく、行政指導の対象となる可能性もあります。
法改正の情報を常に把握し、適切なタイミングで労使協定や就業規則を見直す体制が不可欠です。
雛形の丸写しでは対応できない個別事情
厚生労働省などが提供する労使協定のひな形は非常に有用ですが、それをそのまま使用するだけでは、自社の実態に即した運用ができない場合があります。
例えば、独自の勤務形態を導入している場合や、有期契約労働者の更新基準が複雑な場合など、企業ごとの個別事情を協定に反映させなければ、形骸化してしまう恐れがあります。
雛形はあくまで土台と捉え、自社の就業規則や労働環境に合わせて内容を精査し、カスタマイズすることが重要です。
専門家のサポートも視野に入れつつ、まずは自社で協定を締結・運用するための基本的な流れを把握しましょう。
専門家による継続的なサポートで実現する適切な労務管理
社会保険労務士などの専門家を活用する最大のメリットは、法改正への迅速かつ的確な対応と、各企業の状況に合わせたオーダーメイドの労務管理が実現できる点です。
専門家は、最新の法解釈に基づいた協定書の作成はもちろん、従業員への説明会の実施や個別の相談対応まで、継続的なサポートを提供します。
これにより、人事労務担当者の負担を大幅に軽減し、企業は安心してコア業務に専念できます。
EPコンサルティングサービスでは、社会保険労務士9名を含む専門家が、コンプライアンスを遵守した最適な解決策を提案します。
育児休業の労使協定|締結から周知までの3ステップ
育児休業に関する労使協定を有効に成立させ、適切に運用するためには、正しい手順を踏むことが不可欠です。
このプロセスは、大きく分けて3つのステップで構成されます。
労働者の代表を選び、協定を正式に締結し、そしてその内容を全従業員にしっかりと知らせることです。
これらのステップを一つひとつ確実に行うことで、制度の円滑な導入と、将来的な労使間のトラブル防止につながります。
労使協定の締結のルールについては「労使協定締結のルールについて」で詳しく紹介しています。
ステップ1:労働者の過半数代表者を選出する
労使協定を締結する最初のステップは、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出することです。
事業所に労働者の過半数で組織される労働組合がある場合は、その組合が代表者となります。
労働組合がない場合は、投票や挙手といった民主的な方法で、労働者の中から代表者を選出しなければなりません。
会社側が特定の人を指名したり、親睦会の代表を自動的に過半数代表者とみなしたりすることは認められていないため、選出プロセスを適正に行うことが重要です。
ステップ2:労使協定を締結する(届出は不要)
過半数代表者が決まったら、会社側と代表者との間で協定内容について協議し、合意に至れば労使協定書を作成します。
協定書には、協定の当事者である事業主と過半数代表者がそれぞれ署名または記名押印することで、正式に締結となります。
時間外労働に関する協定(36協定)とは異なり、育児・介護休業に関する労使協定は、労働基準監督署への届出は不要です。
締結後は、社内で大切に保管してください。
ステップ3:協定内容を従業員に周知する
労使協定を締結した後は、その内容を全従業員に周知する義務があります。
周知を怠ると、たとえ協定を締結していてもその効力が認められない可能性があるため、非常に重要なステップです。
具体的な周知方法としては、事業所の見やすい場所への掲示、書面での交付、社内LANやイントラネットへの掲載などが挙げられます。
従業員がいつでも協定内容を確認できる状態にしておくことが求められます。
手続きの流れを理解したところで、次に協定書に記載すべき具体的な内容を見ていきましょう。
労使協定については「労使協定について」で詳しく紹介しています。
【厚生労働省の雛形あり】育児・介護休業に関する労使協定の書き方
育児・介護休業に関する労使協定書を作成する際は、厚生労働省が提供している雛形を参考にするとスムーズです。
この雛形には、法律で定められた記載事項が網羅されており、自社の状況に合わせて必要な箇所を修正するだけで、法的に有効な協定書を作成できます。
厚生労働省のウェブサイトからダウンロード可能なため、まずは一度内容を確認し、自社で定めるべき項目を検討することから始めましょう。
協定書の中身、書き方にフォーカスします。
労使協定に記載すべき必須項目
労使協定書に記載すべき項目は、協定の種類によって異なります。育児休業や介護休業に関する労使協定においては、申出を拒むことができる労働者の具体的な範囲を明記することが、労働者の福祉に関する法律で定められています。
2025年法改正に対応した記載例
2025年4月の法改正に対応するため、労使協定書の内容を見直す必要があります。
特に、「子の看護休暇」および「介護休暇」に関する項目で、従来認められていた「勤続6カ月未満の労働者」を適用除外とする一文は削除しなければなりません。
育児休業の労使協定に関するよくある質問
ここでは、育児休業の労使協定に関して、人事労務担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
協定の有効期間や、申出を拒否できる範囲の具体的な運用、パート・アルバイト従業員の扱いなど、実務で判断に迷いやすいポイントを解説します。
労使協定で定めれば、勤続1年未満の従業員からの育児休業の申出は必ず拒否できますか?
はい、労使協定で「勤続1年未満の労働者」を育児休業の対象外と定めている場合、法的にその従業員からの申出を拒否することが可能です。
ただし、これは企業の権利であり、義務ではありません。
人材確保や定着の観点から、企業の判断で育休取得を認めることもできます。
育児休業に関する労使協定に有効期間はありますか?
法律上、有効期間を定める義務はありませんが、1年程度の有効期間を設けることが望ましいです。
法改正への対応や、定期的に労使で見直しを行う機会を確保するためです。
期間を定めないと協定は自動更新されますが、変更が必要になった際に手続きが煩雑になる場合があります。
パートやアルバイトの従業員も育児休業の労使協定の対象になりますか?
はい、パートやアルバイトといった雇用形態にかかわらず、すべての労働者が育児休業制度の対象となります。
したがって、労使協定で定める除外要件に該当しない限り、パート従業員であっても育児休業を申し出ることができ、企業はこれを拒めません。
まとめ
育児休業に関する労使協定は、特定の労働者を休業制度の対象から除外するために締結される取り決めです。締結は義務ではありませんが、適用除外を設けたい場合は必須となります。除外できる労働者の範囲は、育児・介護休業法により、育児休業の場合、①入社1年未満の者、②申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな者、③1週間の所定労働日数が2日以下の者、と定められています。
2025年4月の法改正により、子の看護休暇では、労使協定による勤続6カ月未満の労働者の適用除外規定が廃止されるため、協定の見直しが不可欠です。また、介護休暇においても、労使協定による勤続6カ月未満の労働者の適用除外規定が廃止されます。労使協定の締結に際して労働基準監督署への届出は不要です。
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