コラム

2023年 今年の振返り、そして2024年へ

給与・社保・人事労務

2023年も、残すところあと僅かとなりました。皆様、2023年は如何でしたでしょうか。

今年は、スポーツに盛り上がった1年であったと感じております。3月のWBCにおける侍ジャパンの活躍、9月の男子バスケットボール日本代表のパリ五輪出場決定や10月のラグビーワールドカップ、そして12月にはボクシング井上尚弥選手の2階級4団体統一と多くの勇気と感動を受けた年であったと思っております。その中でも、私的には、今年の高校バスケットボールの冬の祭典、Winter Cupは1回戦から決勝まで、非常に多くの感動を受けました。

また、5月には新型コロナがインフルエンザと同等の5類に移行されたことに伴い、世の中が新たに動き出した1年でもあったのではないかと思います。

私共の業務と関連してみますと、各企業において、やはり「人」の動きと言うものが活発になると共に、その確保及び活用について、人事担当者様をはじめ、各部署レベルにおいても頭を悩ませることが多かったのではないかと感じております。もちろん、その背景には、最低賃金額の上昇にみるような人件費の高騰、テレワークの普及による働く場所及び働き方の変更、そして労働者の働くことへの意識等、様々な要因が存在しているかと思いますので、一概に“これだ!”と根本的な原因を見つけることは難しいかと思います。

そこで今回は、人事労務に関する法改正と言う視点で、2023年の簡単な振返りと2024年の変化について見てみたいと思います。

2023年の振返り

さて、早速、2023年の法改正を「労務関係」、「労働・社会保険関係」そして「税務その他」という視点で振返ってみたいと思います。

(1)労務関係

労務関係で一番インパクトがあったものとしては、4月からの中小企業に対する割増賃金率の適用猶予措置の廃止ではないでしょうか。従来、60時間を超える時間外労働に対しても25%増の割増賃金の支払いで良かったものが、50%増になるという非常に大きな変化だったと思います。これは単純に割増賃金率の変更と言うだけではなく、時間管理の徹底、業務効率化による残業時間の削減等、企業側に対し、多くの検討課題を残したのではないかとおもっております。

また、今年は10月の最低賃金額の改定により、初めて全国平均が1,000円を超えました。年々、テレワークで対応可能な業務が増えてきているかと思いますので、求職者が仕事を選ぶ際にも地元ではなく、賃金の高いところに応募するきっかけにもなっているかと思います。

(2)労働・社会保険関係

次に、労働・社会保険関係ですが、やはり10月の年収の壁・支援パッケージではないでしょうか。急遽スタートした制度でしたので、弊社も、その内容を的確に把握することからスタートしました。「106万円の壁」、「130万円の壁」という2つの壁に対し新たな施策がスタートしましたが、130万円の壁に対する「事業主の証明による被扶養者認定」については、弊社におきましても複数の相談や実例があり、少なからずインパクトのあるものではないかと感じております。

(3)税務その他

2023年振返りの最後として、税務その他になります。ここでは、やはり国外居住扶養親族の要件の見直し、が非常に大きなインパクトがあったと感じております。年末調整の準備を始めた10月以降、この要件に関するお問い合わせを数多く受けると共に実際に年末調整書類のチェックを行う際には、国外居住扶養親族の年齢を確認し、その上で、送金額がいくらだったのかというように、非常に注意深く業務を実施させて頂いたところです。恐らく、外国人労働者が多く在籍する人事担当者の方におかれましては、従業員から多くの質問を受けたのではないかと思います。

2024年の法改正概要

では、2024年の法改正についても、振返りと同様に「労務関係」、「労働・社会保険関係」そして「税務その他」という3つの視点で見て行きたいと思います。

(1)労務関係

まず、労務関係です。労務関係については、Firm News等でもお知らせさせて頂いております「労働条件明示事項の追加」が、現状では最もインパクトのあるものかと思います。この明示事項の追加は、①全ての労働契約締結時、②有期労働契約締結時および更新時、③無期転換申込権が発生する契約更新時、のそれぞれ場面において影響するものとなります。

この法改正は4月からとなりますので、1月から3月までの間において契約書のフォームの変更等の準備が必要となります。

(2)労働・社会保険関係

次に、労働・社会保険関係です。ここでは、10月からスタートする、健康保険及び厚生年金の短時間労働者への適用拡大が最も大きな改正になるかと思います。既に100名を超えている企業においては影響ありませんが、10月からは、従業員数51人以上の企業に関し、パート・アルバイト等の短時間労働者についても、社会保険の加入が義務化となりますので、現在のパート・アルバイト等のうち、どれくらいの人数が社会保険に加入することになるのか、そして会社の負担はどれくらい増えるのか等の試算をしておくことが望ましいかと思います。

(3)税務その他

最後に、税務その他です。年末調整業務がやっと一息ついたところではありますが、2024年の年末調整時から住宅取得控除申告書への借入残高証明書の添付不要になると共に2025年扶養控除申告書の提出が簡略化される予定となっております。借入残高証明書につきましては、2024年1月1日以降に取得した住宅について、従来年末調整時に住宅ローン控除を受けるために提出していた借入金残高証明書の添付が不要となり、扶養控除等申告書につきましては、前年の申告内容から記載すべき事項に変更がない場合は、変更がない旨の記載のみで提出可能になる予定です。

2024年を更に飛躍の年に

以上、法改正という視点で2023年の振返りと2024年の変化について見てきました。

改めて、2023年という1年間を振り返りますと、悩みながらも多くのチャレンジをした1年であったと感じております。弊社のビジネスとしても、10月にEPCS沖縄及び社会保険労務士法人EOS沖縄支店、11月に大阪支店と新たな拠点を設け、今までにない動きのあった1年となりました。

2023年が2024年の飛躍に向けた重要な1年であったと思いつつ、2024年が皆様にとって良い1年になることを望みながら、今年最後のコラムとさせて頂きます。

改めまして、本年も大変お世話になりました。2024年も何卒、宜しくお願い申し上げます。

松本 好人

松本 好人Yoshito Matsumoto

HRソリューション事業部 執行役員 事業部長 特定社会保険労務士 法学修士、日本労働法学会所属 大学院修了後、栃木労働局での相談業務、横浜の社労士事務所を経て、EPCSに入社。

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