コラム
社会保険適用+α
5月に入り、新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に変わりました。
日本国内で初めての感染が確認された3年前と現在を比べると、多くの企業で、多少なりとも、働き方に変化があったのではないでしょうか。特にリモートワークを導入した企業は多く、在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務に関するご相談を頂く事も増えたように感じています。
リモートワークの実施場所は、日本国内に限らないという視点から、今回は、社会保険適用の基礎的事項を確認後、日本の会社と雇用契約がある人が、海外で働く場合の社会保険の適用について見ていきたいと思います。
社会保険とは
社会保険とは、病気や怪我、老後、失業などに備えて、私たちの生活を保障する公的な保険制度であり、社会保障制度の1つです。
企業などで働く従業員にとって関係がある社会保険は、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の5つです。
社会保険の加入義務
社会保険の加入義務という視点では、会社に対する社会保険の適用、そして、そこで働く従業員への適用という2つの視点で見る必要があります。そこで以下では、どのような会社が社会保険の適用事業所とされ、そこで働くどのような従業員が社会保険に加入しなければならないか、見て行きたいと思います。
(1)会社への適用
イ 社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)
次の事業所は加入が義務付けられています。 ① 常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所 ② 常時5人以上の従業員が働いている事業所、工場、商店等の個人事業所 ※ただし、5人以上の個人事業所であってもサービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等は、その限りではありません。
ロ 労働保険(雇用保険・労災保険)
労働者を雇用する事業は、その業種、規模等を問わず、すべて加入が義務付けられています。(2)労働者への適用
イ 社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)
① 正社員・法人の代表者・役員等 健康保険・厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常用的に使用される方は被保険者となり、国籍、身分などは問われません。 ※健康保険は75歳未満、厚生年金保険は70歳未満の方
② パートタイマー・アルバイト等 1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上である方は被保険者となります。
ロ 雇用保険
常用・パート・アルバイト・派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、① 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であり、② 31日以上の雇用見込みがある場合は被保険者となります。 社会保険とは異なり、法人の代表者は被保険者になりません。
ハ 労災保険
常用・パート・アルバイト・派遣労働者等に適用されます。 一方で、代表権・業務執行権を有する役員は、適用されません。
採用地と働く場所による適用の違い
国内で採用された方が前記の適用事業場で勤務し、かつ、労働条件が加入要件を満たす場合には、当然、社会保険の適用を受けることとなりますが、弊社でご相談を受けるケースを踏まえ、(1)国内採用の人が海外で働くケース、(2)海外現地採用の人が海外で働くケース(リモートワーク)、について見てみたいと思います。
(1)国内採用の人が海外で働くケース
<健康保険> 社会保険加入要件を満たせば加入を継続。
<介護保険> 健康保険に加入している40歳以上65歳未満の被保険者が対象。国内に住所がある方のみ加入するため、転勤により日本国内から外国へ転居した場合は届出が必要。
<厚生年金> 社会保険加入要件を満たせば加入を継続。
<雇用保険> 出張や海外支店等への転勤によって国外で働く場合や、海外現地法人等へ出向する場合には、国内の出向元との雇用関係が継続している限り被保険者のままである。
<労災保険> 適用事業に使用される者で、賃金を支払われるものは適用が継続される。
(2)海外現地採用の人が海外で働くケース(リモートワーク)
<健康保険> 居住地に関わらず、社会保険加入要件を満たせば加入が必要。日本の会社所属で指揮命令下にあり、労働の対価として給与が支払われている場合には週の労働時間に応じて社会保険に加入する事になる。
<介護保険> 被保険者とはならない。
<厚生年金> 居住地に関わらず、社会保険加入要件を満たせば加入が必要。社会保障協定を締結している国で居住していたとしても、社会保障協定は日本から派遣されて派遣期間が5年を超えない場合に相手国の社会保険の適用を免除されるもののため、当初からリモートワークを前提とした現地採用者には適用とならない。
<雇用保険> 被保険者とはならない。
<労災保険> 日本の会社に所属していて、その指揮命令下にあり、海外に居住している場合は、日本国内の従業員同様に適用される。
採用の活性化に向けて
会議などのオンライン化の進む中で、グローバル採用も、ますます増えてきました。
「こういう状況の人を採用する予定があるのですが…」や「コロナ禍が落ち着いたので海外からたくさん採用するのですが…」など、何か懸念事項がある場合や、懸念事項があるのかどうかも分からないという状況が、人事担当者の課題として挙がってくるかもしれません。
EPコンサルティングサービス及び社会保険労務士法人EOSでは、給与計算、社会保険手続き、そして労務相談をワンストップで提供することにより、企業および人事担当者が抱える問題及び課題をサポートしておりますので、気になることがありましたら、お気軽にお声がけ頂きたいと思います。
角下 梨絵Rie Sumishita
HRソリューション事業部 マネージャー 社会保険労務士 社会保険労務士試験合格後、EPコンサルティングサービスに入社。現在、事業部のマネジ メントの他、外資系企業の給与計算、社会保険及び労務管理を中心に担当