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配偶者控除の誤申告はリスク大!「扶養外」でも控除可能なケースの判別法と源泉徴収事務の注意点

給与・社保・人事労務

「年末調整で配偶者が扶養ではない」と従業員から申告され、そのまま処理してよいか迷う担当者は少なくありません。配偶者控除の対象外であったとしても、所得によっては配偶者特別控除を受けられる点には注意が必要です。

本記事では、「扶養」という言葉の誤解から、配偶者特別控除の適用条件や申告書のチェックポイント、従業員からのよくある質問までを解説します。年末調整のミスを防ぎ、従業員の控除を正しく適用するために、ぜひご活用ください。

「税法上の扶養」と「控除」の定義

ここでは、担当者が押さえておくべき「扶養」と「控除」の正しい定義と、実務上の役割について解説します。

<扶養と控除の基本>

  • 「扶養=配偶者控除」ではない
  • 実務上の区分け
  • 担当者の役割

「扶養=配偶者控除」ではない

従業員が使う「扶養」という言葉は、多くの場合、健康保険や年金の「社会保険上の扶養」を指しています。一方で、年末調整で扱うのは、所得税や住民税に関する「税法上の扶養」です。

税法上では、配偶者の所得に応じて「配偶者控除」または「配偶者特別控除」という所得控除が受けられます。「配偶者控除」の対象外と従業員が自己判断していても、所得額によっては「配偶者特別控除」の対象となるケースがあるため、言葉の混同に注意が必要です。

実務上の区分け

年末調整の実務では、従業員の配偶者の所得状況に応じて、控除の適用を次の3つのパターンに区分して考えます。

1. 配偶者控除の対象となるケース

2. 配偶者特別控除の対象となるケース

3. どちらの控除の対象にもならないケース

従業員から「扶養ではない」と申告されても、それはあくまでパターン1に該当しないという意味かもしれません。担当者は、必ず提出された申告書で配偶者の「合計所得金額」を確認し、パターン2に該当しないかを判断する必要があります。

担当者の役割

年末調整における担当者の役割は、従業員の「扶養ではない」という自己申告をそのまま受け入れることではありません。提出された「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書」に基づき、従業員本人と配偶者の合計所得金額を法的な要件に照らし合わせ、適用される控除額を正しく計算することです。

従業員が「収入」と「所得」を混同している可能性も念頭に置き、申告書の内容に疑問があれば確認を促し、従業員が受けられるべき控除を適切に適用できるようサポートする案内役としての役割も求められます。

配偶者特別控除を適用できるか?確認すべき3つの要件

従業員の配偶者が「配偶者控除」の対象外であっても、すぐに「控除なし」と判断するのは早計です。ここでは、担当者が申告書を確認する上で必ずチェックすべき3つのポイントを解説します。

<配偶者特別控除の適用要件>

  • 配偶者の「合計所得金額」
  • 従業員本人(申告者)の「合計所得金額」
  • 配偶者が「事業専従者」ではないか

配偶者の「合計所得金額」

最初の要件は、配偶者自身の所得額です。配偶者特別控除を受けるためには、配偶者の年間の合計所得金額が、配偶者控除の対象となる所得の上限を超え、かつ配偶者特別控除で定められた上限所得の範囲内である必要があります。

従業員が「扶養ではない」と言う場合、多くはこの配偶者控除の所得上限を超えたことを指しますが、それを超えても配偶者特別控除の上限所得の範囲内であれば、控除の対象となる可能性がある点を担当者は忘れてはいけません。

従業員本人(申告者)の「合計所得金額」

二つ目の要件は、控除を申告する従業員本人の所得額です。配偶者の所得が要件を満たしていても、従業員本人の年間の合計所得金額が一定の所得上限を超える場合、配偶者特別控除は適用できません。申告書には従業員本人の所得を見積もる欄があるため、この金額が基準を超えていないかを必ず確認しましょう。

配偶者が「事業専従者」ではないか

三つ目の要件は、配偶者の働き方に関する要件です。従業員本人が個人事業主であり、その配偶者が「事業専従者」として給与の支払いを受けている場合、配偶者特別控除は適用できません。事業専従者給与は、事業主の経費として計上されるため、さらに配偶者(特別)控除を適用すると二重の優遇になってしまうからです。副業で個人事業を行っている従業員などの場合は注意が必要です。

申告書の確認ポイントとミス防止策

年末調整の申告書は、従業員からの自己申告に基づいて作成されるため、意図せずとも誤りが生じやすい書類です。ここでは、担当者が申告書を確認する際に注意すべき3つのポイントと、ミスを未然に防ぐための対策を解説します。

<申告書確認のポイント>

  • 「収入」と「所得」の混同がないか
  • 産休・育休手当の誤計上
  • 「見積額」と「確定額」のズレ

「収入」と「所得」の混同がないか

頻繁に発生する誤りが、「収入」と「所得」の混同です。年末調整の控除額を計算する上で基準となるのは、税法上の「合計所得金額」ですが、従業員は手取り額や年間の総支給額である「収入(年収)」を申告書の所得欄に記入してしまうケースが多くあります。

特に配偶者がパートタイマーの場合、この混同によって本来受けられるはずの配偶者特別控除が適用されない事態になりかねません。申告書の所得欄に収入と見られる金額が記載されていた場合は、給与所得控除を差し引く前の金額ではないか確認を促しましょう。

産休・育休手当の誤計上

配偶者が出産や育児で休業していた年に注意が必要なのが、産前産後休業や育児休業中に受け取る手当金の取り扱いです。健康保険から支給される「出産手当金」や、雇用保険から支給される「育児休業給付金」は、税法上非課税所得とされており、年末調整で申告する合計所得金額には含まれません。申告された所得の内訳に疑問がある場合は、これらの手当金が含まれていないかを確認してください。

「見積額」と「確定額」のズレ

年末調整は、その年の所得が確定する前に行われるため、申告書には配偶者の「所得の見積額」を記入します。しかし、12月の給与額の変動や、年末にかけてのシフト状況などにより、当初の見積額と確定額にズレが生じることがあります。

このズレによって、適用される控除の区分が変わってしまった場合、原則として従業員本人が確定申告で修正する必要があります。担当者としては、見積額と確定額が変動する可能性があることを従業員へアナウンスし、所得が確定したら会社に報告してもらうなどのルールを設けておきましょう。

従業員からの「よくある質問」回答例

ここでは、従業員から寄せられる3つの質問とその回答例を紹介します。

<よくある質問と回答>

  • 社会保険の扶養を超えても申告できますか?
  • 配偶者が個人事業主の場合の書き方は?
  • 扶養から外れた場合、他の手続きは不要ですか?

社会保険の扶養を超えても申告できますか?

年末調整で申告できる場合があります。「社会保険の扶養」と、年末調整で扱う「税法上の扶養」は、基準となる年収の考え方が異なる別の制度です。社会保険の扶養から外れていても、配偶者の方の年間の「合計所得金額」が税法上の基準の範囲内であれば、「配偶者特別控除」を受けられる可能性があります。

配偶者が個人事業主の場合の書き方は?

配偶者の方が個人事業主の場合、「給与所得者の配偶者控除等申告書」の所得金額欄には、年間の「事業所得」の見積額をご記入ください。事業所得は、年間の総収入金額から必要経費を差し引いた金額です。もし配偶者の方が青色申告を行っている場合は、青色申告特別控除を差し引いた後の金額となります。

扶養から外れた場合、他の手続きは不要ですか?

年末調整の申告書の提出のほかに、状況に応じて会社への追加の手続きが必要になる場合があります。ご自身の給与に会社独自の「家族手当」や「扶養手当」などが支給されており、その支給条件が配偶者の収入によって決まる場合は、別途、社内の福利厚生担当部署への届出が必要になる場合があります。また、社会保険の扶養からも外れる場合は、健康保険証の切り替え手続きも必要です。

まとめ

年末調整で「配偶者が扶養ではない」と申告された場合でも、担当者はすぐに控除なしと判断せず、配偶者特別控除の適用可否を慎重に確認することが不可欠です。特に、従業員が混同しがちな「社会保険上の扶養」と「税法上の扶養」の違いを理解し、申告書の「収入」と「所得」の誤りなどを見抜くことが重要なポイントとなります。

自社での年末調整業務における複雑なケースの判断が困難な場合は、EPCSの給与計算・社会保険アウトソーシングをご活用ください。年末調整の際は、お客様のニーズに合わせた案内・記入例などの資料をご用意し、内容チェックから問い合わせ対応まで行き届いたサービスを提供するため、安心してお任せいただけます。

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