コラム
三十余年
過日、妻へインボイス制度の説明をした。仕事柄、影響があるのだそうだ。そもそも消費税は・・と説明を始めたとき、平成元年の消費税導入の時を思い出した。
当時私は学生だった。実家で自家用車を買い替えようという話になり、候補車の販売店へ行った。消費税導入後の4月登録なら消費税6%(※)の負担、導入前の3月登録なら物品税20%弱の負担となるから、1ヶ月待てば黙っていても安く買える。では4月登録で、と販売店へ言うと「3月に登録させてください。お値引きしますので。」とのことだった。父がダメもとで、と大幅な値引きを要望するとアッサリ通ったので我が家には物品税を支払った新車がやって来た。これは一例だが、消費税導入の際に色々な混乱が世間では起きていたように記憶している。
消費税がインボイス方式を採用せず帳簿方式で導入された背景とか実務運用上の違い、といったことは社会人になって経理の仕事に就いてから知った。いわゆる「益税」問題を解消できないまま、日本でインボイスが導入される日は来ないのか、と思っていたところ、先般の消費税率引上げの際に、インボイスの導入が併せて決定された。消費税の導入から実に30年の歳月が経っていた。
インボイス導入をめぐる世の中の種々の出来事についてここでは触れないが、1つ言えることは、この三十余年、『免税事業者も(当然に)消費税を受け取る』という実務慣行が世間に定着しており、今回、免税事業者の売手には消費税分は支払わないという動きが一部にあったがために、影響が大きかったという点である。
「たられば」の話をすることはあまり意味の無いことなのかもしれないが、もし消費税を導入してから程なくインボイス方式を導入していれば、世の中への影響はここまで大きくなかったのではないだろうか。私はそこに、三十余年という歳月の重みを感じざるを得ないのである。
※消費税導入時~1997年の消費税率改定時まで、乗用車については6%の税率が適用されていました

幅舘 稔Minoru Habatate
ACCTソリューション事業部 マネージャー 公認会計士 事業会社在職中の2008年に公認会計士試験合格。 2011年公認会計士登録。同年EPコンサルティングサービスに入社。
