コラム

労働時間の原理原則 -該当する時間と枠の考え方-

給与・社保・人事労務

4月からの新年度も1か月が経過しようとしています。社会人生活がスタートした方や新たな部門や部署、又は新たなポジションでの仕事等、まだ新たな環境に慣れていない方も多くいらっしゃるのではないかと思います。

新たなことを始めると、どうしても多くの時間を費やすことは容易に想像できるかと思いますが、それによって、なかなか帰れない、残用時間が増えているという方もいらっしゃるでしょうし、そのような方の労働時間をどのようにコントロールするかは労務管理において非常に重要なポイントとなります。

そこで今回は、労務管理の最も基本的でありつつも重要なものである「労働時間」の基本的事項について、見ていきたいと思います。

「労働に関する時間」と「労働時間」

皆さん、仕事がある日の皆さん自身の1日の動きを想像してみてください。

電車やバス等で出社し、始業時間になったら仕事を開始する。お昼になったら休憩となり、その後、午後の仕事がスタート。もしかすると、途中、手が空いてしまったりすることもあるかもしれませんが、終業時間になったら帰宅、というような流れかと思います。

これらは、「労働に関する時間」ではあるものの、これら全てが労働基準法で定める「労働時間」とは一致しません。しかし、労働基準法のどこを見ても、「労働時間」の定義はありません。時間外割増賃金等の算出にも必要な労働時間がどのような時間なのか書いていないのが現状です。

では、どのような時間なのか。この点については、三菱重工長崎造船所事件(最一小判平12.3.9)において「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの」であり、「労働契約、就業規則、労働協約等の定めいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」とされています。そして、労働基準法における労働時間の考え方もこの判決に即したものとなっております。

労働基準法における労働時間に関する基本的な条文

労働基準法では「第4章 労働時間、休憩、休日、年次有給休暇」という章において、労働時間の長さに関する規制をはじめとして、変形労働時間制や休憩時間の長さ、時間外・休日労働を行う場合の方法等、労働時間に関係する様々な規定がありますが、ここでは労働時間の長さ、休憩及び休日について、簡単に見ていきたいと思います。

1.労働時間の長さ

労働時間の長さについては、第32条に規定されており、第1項で、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」。そして第2項で「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」とそれぞれ規定しています。つまり、労働基準法では、労働時間規制の基本を1週間として、1週40時間という「労働時間」を1日8時間を上限として各日に割り振るという形をとっているのです。

2.休憩時間

次に休憩についてです。休憩については、第34条において「労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」とされています。殆どの会社では休憩は1時間かと思いますので、法律上の要件はクリアすることになります。

3.休日

最後に休日ですが、労働基準法35条において、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」と規定されており、これが「法定休日」と言われるものであって、この日に労働した場合には、休日労働に関する割増賃金の支払いが必要となります。多くのケースでは、1日の労働時間を8時間としており、週5日勤務で40時間、そのため結果的に週2日休みがある、という形になります。

もっとも重要な「労働時間の枠」の考え方

では、労働時間を正しく理解するために最も重要な労働時間の枠について、先ほど紹介させて頂いた「労働時間」、「休憩」、「休日」の条文をベースにご説明させて頂きたいと思います。

縦軸に時間、横軸に日数(1週間)を書いてみてください。そして、横軸の日数のうち1日を労働基準法35条で規定する休日とした場合6日間となります。

そして、1日の上限は労働基準法32条で8時間となりますから、「8時間×6日=48時間」という枠が出来上がります。

この48時間という枠に週の労働時間の上限である40時間を入れてあげる、これが労働時間を考える上での基礎であり、もっとも重要なこととなります。

なお、この枠は法定労働時間の枠となりますので、この枠を超える労働は、原則として、認められないこととなります。

例外は枠の拡張と変更

週40時間、1日8時間という枠はありますが、時間外・休日労働に関する協定(36協定)を締結し、時間外・休日労働が可能となる、又は、変形労働時間制を導入し、1日10時間の労働が時間外労働手当なしに可能となるなど、労働時間の例外もあります。

これらは、先ほど見た「枠」を拡張したり、変更するものと考えて頂ければ、分かりやすいのではないかと思います。

おわりに

労働基準法の改正が現在議論されていますが、その中心は、働き方改革関連法施行後5年を経過したことによる労働時間法制となっています。今後、どのように変わるのか、又は変わらないのか等、議論の状況を見ていかなければいけませんが、原理原則が変わることはないと思います。

是非、基本的な考え方を定着させ、安定的な労務管理を実施して頂ければと思います。

角下 梨絵Rie Sumishita

HRソリューション事業部 マネージャー 社会保険労務士 社会保険労務士試験合格後、EPコンサルティングサービスに入社。現在、事業部のマネジ メントの他、外資系企業の給与計算、社会保険及び労務管理を中心に担当

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