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令和8年度税制改正でどう変わる?年収の壁の基礎知識

会計・経理・税務

「年収の壁」は一つではない

高市政権の発足後、令和8年度税制改正大綱が公表され、「年収の壁が178万円まで引き上げられた」というニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。しかし、実は「年収の壁」は178万円だけではありません。年収の額に応じて、税金や社会保険の扱いが変わる複数の「壁」が存在します。

本コラムでは、令和8年度税制改正大綱の内容を踏まえ、現在押さえておきたい主な「年収の壁」について、全体像をわかりやすく整理していきます。

「年収の壁」の種類

一般的に「年収の壁」と呼ばれるものには、106万円、130万円、136万円、150万円、160万円、178万円、201万円など、複数の基準があります。

これらは、税金がかかるかどうか、配偶者や親の扶養に入れるかどうか、社会保険に加入する義務が生じるかどうか、といった判断を行うための重要なラインです。

また、「年収の壁」は大きく次の2つに分けられます。

  • 税金の壁:所得税や住民税、各種控除に関係するもの
  • 社会保険の壁:健康保険や年金の加入義務に関係するもの

それでは、それぞれの「壁」について具体的に見ていきましょう。

「年収の壁」の内容

※給与収入のみである場合を前提として、金額の低いものから順に記載しています。

① 106万円の壁【社会保険】

厚生年金・健康保険の加入義務

従業員50人超の企業で、週20時間以上勤務し、年収換算で106万円を超えると、厚生年金・健康保険への加入義務が生じます。この場合、配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れ、本人が保険料を負担することになり、同時に会社にも保険料負担が発生することになります。

なお、106万円の壁は最低賃金の状況を踏まえ、令和7年6月から3年以内に撤廃することが予定されており、また、企業規模の要件も縮小・撤廃が予定されています。これらの要件が撤廃されたあとは、企業に週20時間以上で勤務する要件のみ残り、厚生年金・健康保険加入義務の範囲が広がることとなるため、保険加入者の増加が予想されます。

② 119万円の壁【税金】

住民税の非課税限度額(単身者)

令和8年度税制改正大綱により、住民税の非課税限度額(単身者)が、110万円から 119万円に引き上げられます(令和9年から)。

③ 130万円の壁【社会保険】

国民年金・国民健康保険の加入義務

年収換算で130万円を超えると、企業規模に関係なく、国民年金・国民健康保険への加入義務が生じます。この場合、配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れ、本人が保険料を負担することになり、同時に会社にも保険料負担が発生することになります。

④ 136万円の壁【税金】

扶養控除・配偶者控除

令和8年度税制改正大綱による基礎控除の見直しにより、扶養控除・配偶者控除の対象となる収入要件は、収入ベースで136万円以下となりました。この範囲内であれば、扶養控除や配偶者控除を受けることができます。

⑤ 150万円の壁【税金】

特定親族特別控除

19歳以上23歳未満の大学生などのお子さんについては、年収150万円以下であれば、扶養控除を満額で適用できます。150万円を超えても一定の収入(現行188万円以下)までは、控除額が段階的に減少する制度となっています。例えばお子さんのアルバイト代が④の扶養控除の収入要件(136万円)を超えたとしても、直ちに扶養控除の全額が控除不可とはならない設計になっているため、親の税金が急激に増えることを防ぐことができる仕組みとなっています。

※令和8年税制改正大綱では特定親族特別控除については特に記載されていないため、基礎控除・給与所得控除の引き上げに連動して緩和されるかどうか今後の動きに注意が必要です。

⑥ 160万円の壁【税金】

配偶者特別控除

偶者の収入が136万円を超えた場合でも、年収160万円以下であれば、配偶者控除を満額で適用できます。160万円を超えても一定の収入(現行201万円以下)までは、控除額が段階的に減少する制度となっており、⑤と同様に納税者の税金が急激に増えることを防ぐことができる仕組みとなっています。

※令和8年度税制改正大綱では配偶者特別控除については特に記載されていないため、基礎控除・給与所得控除の引き上げに連動して緩和されるかどうか今後の動きに注意が必要です。

⑦ 178万円の壁【税金】

所得税がかからない上限

令和8年度税制改正大綱により、基礎控除の最低保証額が104万円まで、給与所得控除の最低保証額74万円まで引き上げられ、年間の給与収入額がこれらの合計額である178万円までは所得税が発生せず、これを超えると所得税が発生することから“178万円の壁”と言われています。

⑧ 201万円の壁【税金】

配偶者特別控除の適用上限

⑥の配偶者特別控除は、配偶者の収入が201万円(現行)を超えると適用対象外となります。

※令和8年度税制改正大綱では配偶者特別控除については特に記載されていないため、基礎控除・給与所得控除の引き上げに連動して緩和されるかどうか今後の動きに注意が必要です。

おわりに

「年収の壁」は、正しく理解すれば働き方の選択肢を広げるための判断材料となります。

制度の変化を知らないまま収入を抑えるのではなく、自身や家族の状況に応じて最適な働き方を模索することが大事であり、それを考えるきっかけとして、本コラムが少しでもお役に立てば幸いです。今後も税制や社会保険制度の動向には注意を払い、必要に応じて専門家へ相談しながら、賢く制度と向き合っていきましょう。

伊藤 央

伊藤 央Ito Hisashi

ACCTソリューション事業部 マネージャー 税理士 2025年EPコンサルティングサービスに入社。国内事業会社・外資系事業会社・SPCの会計と税務を担当

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