コラム
財務分析とは?4つの視点と10種の指標、経営改善につなげる方法を解説
財務分析とは、単に決算書の数字を眺めるだけでなく、企業の本当の健康状態を明らかにし、次の一手を導き出すための羅針盤です。
本記事では、「財務分析とは何か」という基本から、経営状態を診断する4つの視点と10種の代表的な指標、分析を経営改善につなげる方法までをわかりやすく解説します。自社の課題発見と成長戦略の立案にぜひご活用ください。
財務分析とは?
まずは財務分析について、以下2つの視点で見ていきましょう。
<財務分析の基本>
- 財務分析の目的
- 分析の土台となる「財務三表」
財務分析の目的
財務分析の主な目的は、企業の経営状態を客観的な数値で把握し、将来の意思決定に役立てる点にあります。自社の強みや弱み、潜んでいる課題を発見し、具体的な経営改善策を立案するための重要な判断材料です。
また、金融機関からの融資判断や投資家からの投資評価、取引先との与信管理など、外部の利害関係者に対して自社の健全性や信用力を示すためのデータとしても活用されます。
分析の土台となる「財務三表」
財務分析は、主に「財務三表」と呼ばれる3つの決算書を基に行われます。一つ目は、一定期間の儲けを示す「損益計算書(P/L)」です。二つ目の「貸借対照表(B/S)」は、ある時点での資産と負債のバランスを示します。三つ目は、その期間のお金の流れを示す「キャッシュ・フロー計算書(C/F)」です。
財務三表の数値を組み合わせて分析すれば、企業の経営状態を立体的かつ正確に理解できます。
財務分析で用いる4つの視点
財務分析を行うためには、以下の4つの視点が大切です。順番に解説します。
<財務分析の4つの視点>
- 収益性分析
- 安全性分析
- 生産性分析
- 成長性分析
収益性分析
収益性分析は、企業がどれだけ効率的に利益を生み出せているか「稼ぐ力」を測る分析です。売上高に対してどれだけの利益が残っているか、あるいは投下した資本がどれだけの利益につながっているかといった視点から評価します。
収益性分析により、事業の採算性やコスト構造の問題点を明らかにできます。特に、費用を売上の増減に連動する「変動費」と、売上に関わらず発生する「固定費」に分解すれば、利益がどのように生まれるかの構造(損益分岐点など)を深く理解できます。
安全性分析
安全性分析は、企業の支払い能力や財務体質の健全性、すなわち「倒産しにくさ」を測るための分析です。短期的な資金繰りの安定度(支払能力)と、長期的な視点での負債と資本のバランス(財務構造)の両面から評価します。
この分析を通じて、借入への依存度や資産の換金性を評価し、突発的な経営環境の変化に対する抵抗力を把握すれば、安定した企業経営につながります。
生産性分析
生産性分析は、企業が保有する経営資源(ヒト・モノ・カネ)をどれだけ有効に活用して付加価値を生み出しているかを測るための分析です。主に、従業員一人当たりが生み出す売上高や利益(労働生産性)などを指標として評価します。
この分析により、業務プロセスの改善点や人材配置の最適化、設備投資の効果などを検証可能です。生産性の向上は、企業の収益性改善や競争力強化に直結するため、継続的なモニタリングが求められます。
成長性分析
成長性分析は、企業の「伸びしろ」や将来のポテンシャルを測るための分析です。過去の決算数値と比較して、売上高や利益、総資産などがどの程度のスピードで伸びているかを評価します。
この分析によって、企業が成長段階にあるのか、あるいは成熟・停滞期にあるのかといった事業のライフサイクルが把握できます。将来に向けた投資戦略や事業展開を検討するために重要な分析です。
代表的な財務分析指標10選
4つの分析視点をより具体的に評価するために、代表的な10の財務指標が使用されます。ここでは、以下の4つの分析視点に分類して解説します。
<代表的な財務分析指標>
- 収益性分析の指標
- 安全性分析の指標
- 生産性分析の指標
- 成長性分析の指標
収益性分析の指標
企業の「稼ぐ力」を測る収益性分析で用いられる指標は、主に以下の3つです。
・売上高総利益率(粗利率) = (売上総利益 ÷ 売上高) × 100
商品やサービスの基本的な収益力を示す指標です。比率が高いほど、原価に対して付加価値の高いビジネスであると言えます。
・売上高営業利益率 = (営業利益 ÷ 売上高) × 100
本業での稼ぐ力を示す指標です。販売費及び一般管理費(人件費や広告費など)を含めた上で、どれだけの利益を残せているかを表します。
・総資本利益率(ROA) = (当期純利益 ÷ 総資本) × 100
企業が保有する全ての資産(自己資本と負債)を使って、どれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。
安全性分析の指標
企業の「倒産しにくさ」を測る安全性分析では、短期と長期の視点から以下の3つの指標が用いられます。
・流動比率 = (流動資産 ÷ 流動負債) × 100
1年以内に現金化できる資産(流動資産)が、1年以内に返済すべき負債(流動負債)をどれだけ上回っているかを示す、短期的な支払い能力を測る指標です。
・自己資本比率 = (自己資本 ÷ 総資本) × 100
総資本(資産の合計)に占める、返済不要の自己資本の割合です。この比率が高いほど、他人資本(借入金など)への依存度が低く、財務的な安定性を示します。
・固定比率 = (固定資産 ÷ 自己資本) × 100
土地や建物、機械設備といった固定資産が、返済不要の自己資本でどれだけ賄われているかを示す指標です。
生産性分析の指標
企業の経営資源の「活用効率」を測る生産性分析では、「ヒト」に関する以下の2つの指標が用いられます。
・労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業員数
従業員一人当たりがどれだけの付加価値(企業が生み出した儲けの源泉)を生み出しているかを示す指標です。この数値が高いほど、効率的な人員配置や業務プロセスを実現できていると言えます。
・労働分配率 = (人件費 ÷ 付加価値額) × 100
企業が生み出した付加価値のうち、どれだけの割合が人件費として従業員に還元されたかを示す指標です。この比率が低すぎると従業員のモチベーション低下につながり、高すぎると企業の利益を圧迫します。
成長性分析の指標
企業の「伸びしろ」を測る成長性分析では、過去との比較から以下の2つが代表的な指標です。
・売上高増加率(増収率) = ((当期売上高 - 前期売上高) ÷ 前期売上高) × 100
企業の事業規模が前期と比べてどれだけ拡大したかを示す基本的な成長性指標です。市場シェアの拡大や新規顧客の獲得状況を反映します。
経常利益増加率(増益率) = ((当期経常利益 - 前期経常利益) ÷ 前期経常利益) × 100
本業の儲けに加えて、受取利息や支払利息などの財務活動も含めた企業全体の収益力が、前期と比べてどれだけ向上したかを示します。
財務分析を経営改善につなげる5ステップ
財務分析は、数値を計算して終わりではありません。ここでは、分析結果を次の打ち手へとつなげるための実践的な5つのステップを紹介します。
<財務分析を経営改善につなげるステップ>
- 比較対象を決める
- 指標を計算し、比較する
- 強みと弱み(課題)を特定する
- 「なぜ?」を繰り返し、原因を深掘りする
- 改善アクションプランに落とし込む
比較対象を決める
算出した指標を評価するため、比較のモノサシを決めましょう。自社の数値だけでは良し悪しを判断できないためです。主な比較対象は、過去の自社実績(時系列比較)、同業他社の平均値(他社比較)、自社で設定した経営目標(目標比較)の3つです。
指標を計算し、比較する
次に、財務指標を実際に計算し、ステップ1で決めた比較対象と並べて比較します。例えば「自社の営業利益率は5%だが、業界平均は6%」というように、数値の差(ギャップ)を客観的に可視化します。この段階では良し悪しの判断はせず、事実を洗い出しましょう。
強みと弱み(課題)を特定する
比較して可視化されたギャップの中から、良い数値(強み)と悪い数値(弱み・課題)を特定します。「業界平均より自己資本比率が高い(強み)」「過去より売上総利益率が悪化している(弱み)」といった形で注目点を絞り込みましょう。
「なぜ?」を繰り返し、原因を深掘りする
特定した弱み(課題)に対し、「なぜそうなっているのか?」という問いを繰り返し、根本的な原因を深掘りしましょう。例えば「損益分岐点比率が高い」という課題に対し、「なぜ?→固定費が高いから」「なぜ?→地代家賃と人件費が売上規模に見合っていないから」というように深掘りします。
改善アクションプランに落とし込む
最後に、深掘りして見えた根本原因を解決するための具体的な行動計画を作成します。「仕入先の多様化を検討する」「価格交渉を行う」といった具体的な打ち手を、「誰が(担当者)」「何を(行動)」「いつまでに(期限)」を明確に設定し、進捗を管理できる形にしましょう。
まとめ
財務分析は、企業の持続的な成長を実現するための不可欠な経営ツールです。「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」という4つの視点から自社の状態を多角的に分析しましょう。過去や他社との比較を通じて課題の根本原因を深掘りすれば、次の打ち手が明確になります。
自社での財務分析や改善策の立案が困難な場合は、EPCSの経理・会計・税務アウトソーシングをご活用ください。高い専門的知識を持つ担当者が柔軟かつ臨機応変に対応しますので、安心してお任せいただくことができます。
