コラム
時間外労働への指導が変わる!? -時間外労働の基本的事項の再確認を-
2026(R8)年8月19日、厚生労働省より「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」との報道発表がされました。時間外労働の管理は、多くの企業で労務問題の課題の1つになっているかと思いますし、当然、時間外労働が発生すれば割増賃金も発生しますので人件費へも影響してきます。また、労働基準監督署の監督指導においても、労働時間の適正把握・管理というものは必ずと言っていいほど、確認される事項にもなっています。
そこで今回は、今回、見直しが行われた背景、どのように見直されたのか、そして、時間外労働の基本的事項について見ていきたいと思います。
今回の「見直し」が行われた背景
まず初めに、なぜ、今回の見直しが行われたのか、その背景を見てみたいと思います。
今回の見直しは、日本成長戦略(令和8年7月21日閣議決定)及び経済財政運営と改革の基本方針2026(同日閣議決定)において、「36協定の締結や柔軟な労働時間制度の活用について、よろず支援拠点等との連携を強化しつつ、「働き方改革推進支援センター」や労働基準監督署による相談支援の充実を速やかに実施する」、「労働基準監督署において、重大・悪質な事案に対しては厳正に対応しつつ、労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意にのっとった指導が行われるよう速やかに見直す。」などとされたことを踏まえ行われたものとなります。
日本成長戦略会議の労働市場改革においては、裁量労働制や変形労働時間制、連続勤務規制や勤務間インターバルといったものの挙げられておりましたが、それらと共に挙げられていた労働基準監督署の監督指導が最も早く実行された結果となっております。
今回の見直しでの変更点
次に、今回の見直しでどのように変わったのか、見ていきたいと思います。
今回変わったのは、大きく2つであり「36協定の締結等に関する相談・支援の充実」と「労働基準監督署における対応の見直し」になりますので、以下では、その概要を簡単にご説明させて頂きます。
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36協定の締結等に関する相談・支援の充実
まず、「36協定の締結等に関する相談・支援の充実」ですが、これは、全国の働き方改革推進支援センターに、36協定や特別条項の締結や柔軟な労働時間制度の活用を支援する「専門相談窓口」を設けるものとなります。また、働き方改革推進支援センターと労働基準監督署(労働時間相談・支援班)とのチームにより、36協定や特別条項の締結に関するアウトリーチ型の訪問支援を行うとともに、さらに、よろず支援拠点や商工会議所等との連携を強化し、労務相談のみならず、経営課題の相談にも対応できるような体制を構築するものとなります。
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労働基準監督署における対応の見直し
次に、「労働基準監督署における対応の見直し」となります。多くの方が強く興味を抱くのは、こちらになるかと思います。これまで、労働基準監督署の時間外・休日労働の監督指導は、時間外・休日労働時間数のみに着目して1か月45時間以内への削減を求める一律の指導であったものを見直し、各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認し、確認した状況に応じた必要な指導を行うこととされました。また、当然、個々の事業場の実態を踏まえて、過重労働による健康障害が生じるおそれが高い場合には、引き続き必要な指導を行うこととされています。
時間外・休日労働の基本的事項
労働基準監督署の監督指導が変わったとしても、企業としては、基本的なルールをしっかりと守らなければならないことは当然となります。それでは、時間外休日労働に関する基本的なルールを2つ見てみたいと思います。
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時間外及び休日労働協定の締結と届出
まず1つ目は、「時間外及び休日労働協定の締結と届出」です。より身近な言葉で言うと「36協定の締結と届出」になります。労働基準法における労働時間の原理原則は、週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない(法違反となる)ことになっていますが、この36協定を締結し、届出ることによって、週40時間、1日8時間を超えて労働させたとしても労働基準法に違反しないこととなります(これを「免罰的効果」といいます。)。
そのため、時間外・休日労働が発生する企業においては、必ず、36協定を提出する、提出されている状態であることが必要です。
また、36協定には有効期間を記載する欄が設けられていますが、時々、更新を忘れてしまっているようなケースも目にすることがありますので、有効期間の管理もしっかりと実施しなければなりません。もし、更新が遅れてしまった場合、当然、速やかに提出することが必要です。しかしながら、遅れて提出する際に前回の終了日の翌日からの有効期間を設定したとしても、前回の終了日の翌日から新たに提出した日までの間に時間外・休日労働が行われていた場合、その労働は、労働基準法に違反するものとなりますので、注意してください。
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時間外労働の上限
時間外・休日労働を実施するために36協定の締結は必須となりますが、36協定を締結したからといって、何時間でも時間外・休日労働を行って良いというわけではありません。当然ながら、その上限が定められていますので、その上限を遵守することが必要です。
時間外・休日労働の上限は、以下の通りとなります。
- 原則:原則として月45時間・年360時間
- 例外:(36協定において、特別条項を締結した場合)
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①時間外労働 年720時間以内
②時間外労働+休日労働
・月100時間未満
・「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て80時間以内 ③月45時間を超えることができるのは、原則として年6か月まで
いかがでしょうか。皆様の企業では、しっかりと遵守されていますでしょうか。例外である「月100時間未満」については、多くの方が意識されているのではないかと思いますが、複数月の平均に関しては、どうしても忘れがちになりやすいポイントかと思います。
特に近年の就労人口の減少やそれに伴う採用難により一過性のものと言っても時間外・休日労働が増加するようなケースは多いかと思いますので、是非、今一度、時間外労働の管理状況について、ご確認頂ければと思います。
おわりに
以上、厚生労働省の「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」との発表をベースに、その背景及び内容、そして、時間外・休日労働に関する基本的な事項を説明させて頂きました。
ワークライフバランスという言葉を労働者視点で考えれば、当然、時間外・休日労働は少ない方が良いでしょう。しかし、事業運営やビジネスの視点からすると、なかなか減らしづらいということもあり、人事部の方をはじめ、各部門長等は頭を悩ませているところかと思います。
時間外・休日労働の削減を目的とするならば、現状把握からスタートする必要があり、それに合わせ、管理状況や方法、そして、単月のみではなく、複数月で見た場合に問題がないか等を改めて確認すると共に、時間外・休日労働に紐づく、割増賃金の未払いがないかも、是非、確認して頂ければと思います。
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角下 梨絵Rie Sumishita
HRソリューション事業部 マネージャー 社会保険労務士 社会保険労務士試験合格後、EPコンサルティングサービスに入社。現在、事業部のマネジ メントの他、外資系企業の給与計算、社会保険及び労務管理を中心に担当
