コラム
外貨建取引の会計処理マニュアル|発生時から期末換算、為替差損益の計算まで徹底解説
外貨建取引の会計処理は、グローバルに事業を展開する企業にとって避けて通れない業務です。「どの為替レートを使うべきか」「為替差損益の仕訳はどうするのか」など、その複雑さに悩む経理担当者は少なくありません。
本記事では、外貨建取引の基本ルールから、取引発生時・決済時・決算時の具体的な仕訳例、為替レートの種類、そして為替リスク対策までを解説します。国際取引の会計実務を正確に進めるために、ぜひご活用ください。
外貨建取引とは ?基本の定義とルール
外貨建取引は、海外とのビジネスを行う上で避けては通れない取引形態です。まずは、会計処理を理解するために必要な、外貨建取引の基本的な定義と原則について解説します。
<外貨建取引の基本ルール>
- 外貨建取引の定義
- 円換算の原則
- 為替レートの変動
外貨建取引の定義
外貨建取引とは、売買価額や決済金額が、日本円以外の外国通貨(米ドル、ユーロなど)で定められている取引を指します。具体的には、海外の企業から商品を輸入し代金をドルで支払う、海外の企業へ製品を輸出し代金をユーロで受け取るといった貿易取引が典型例です。その他にも、海外子会社への出資や貸付、外貨預金なども外貨建取引に含まれ、グローバルに事業を展開する企業にとっては日常的に発生する取引です。
円換算の原則
日本の会計基準では、企業はすべての会計記録および財務諸表を日本円で作成し報告することが義務付けられています。そのため、外貨建取引を行った場合は、その取引を必ず適切な為替レートを用いて日本円に換算し、会計帳簿に記録しなければなりません。この手続きを「円換算」と呼びます。外貨建取引の会計処理を正しく行うためには、どのタイミングで、どの為替レートを使って円換算するのかというルールを正確に理解する必要があります。
為替レートの変動
外貨建取引の会計処理が複雑になる要因は、為替レートの変動です。例えば、商品を100ドルで掛けで輸入した日(取引発生日)と、その代金を後日支払う日(決済日)とでは、通常、為替レートは異なります。取引発生日に1ドル150円で計上した買掛金が、決済日に1ドル155円になっていれば、当初の想定よりも500円多く円を支払わなければなりません。この差額が、会計処理における「為替差損益」となり、外貨建取引の重要な論点となります。
外貨建取引の会計処理と仕訳のルール
外貨建取引の会計処理は、「取引が発生した時」「代金を決済した時」「決算期末を迎えた時」という3つのタイミングで、特有のルールに基づいて行われます。ここでは、各タイミングにおける会計処理と具体的な仕訳の方法について見ていきましょう。
<外貨建取引の会計処理>
- 取引発生時:原則は「取引発生日のレート」
- 決済時:原則は「決済日のレート」と「為替差損益」
- 決算時:資産・負債の種類によって換算方法が異なる
取引発生時:原則は「取引発生日のレート」
外貨建取引を会計帳簿に記録する際は、まずその取引が発生した日の為替レート、すなわち「ヒストリカル・レート(HR)」を用いて円換算します。例えば、4月10日に100ドルの商品を掛けで輸入し、その日の為替レートが1ドル=150円だった場合、仕入高と買掛金は15,000円(100ドル×150円)として計上します。この時点では、まだ為替の変動による損益は発生しません。
決済時:原則は「決済日のレート」と「為替差損益」
取引発生時に計上した外貨建ての債権や債務を、後日、実際に外貨で決済する際には、その「決済日の為替レート(CR)」で円換算した金額で処理します。取引発生時のレートと決済時のレートに差があれば、その差額は「為替差損益」という勘定科目を使って処理しましょう。例えば、上記の買掛金を5月20日に決済し、その日のレートが1ドル=155円だった場合、支払う円貨は15,500円となり、差額の500円は「為替差損」として費用計上します。
決算時:資産・負債の種類によって換算方法が異なる
決算日時点で、まだ決済されていない外貨建ての資産や負債が残っている場合、それらを決算日の為替レートで評価替えしなければなりません。
現金預金や売掛金、買掛金といった「貨幣性項目」は、決算日の為替レートで換算し、帳簿価額との差額を「為替差損益」として当期の損益に計上します。一方、棚卸資産や固定資産、子会社株式といった「非貨幣性項目」は、原則として取得時の為替レートのままで、換算替えは行いません。
使用する為替レートの種類
外貨建取引の会計処理において、どの為替レートを適用するかは重要なポイントです。ここでは、会計実務で主に使用される3つの為替レートと、その運用方法について解説します。
<為替レートの種類>
- TTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)
- TTB(Telegraphic Transfer Buying Rate)
- TTS(Telegraphic Transfer Selling Rate)
- 実務での運用
TTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)
TTM(仲値)は、銀行が顧客と外国為替取引を行う際の基準となるレートです。銀行間の取引で使われるインターバンクレートを参考に、各金融機関が通常午前10時頃に決定します。会計処理においては、特定のレートを使用する特段の理由がない場合、このTTMを取引発生日や決算日のレートとして使用するのが一般的です。
TTB(Telegraphic Transfer Buying Rate)
TTBは、銀行が顧客から外貨を買い取って円貨に交換する際に適用されるレートです。企業が輸出代金として受け取ったドルを円に換える場合などに使われます。基準となるTTMから銀行の手数料が差し引かれているため、TTMよりも円高になります。会計上、外貨建ての資産を円換算する際には、TTBの使用が原則です。
TTS(Telegraphic Transfer Selling Rate)
TTSは、銀行が顧客に外貨を販売して円貨を受け取る際に適用されるレートです。企業が輸入代金を支払うために円をドルに換える場合などに使われます。基準となるTTMに銀行の手数料が上乗せされているため、TTMよりも円安になります。会計上、外貨建ての負債を円換算する際には、原則としてTTSの使用が必要です。
実務での運用
法人税法上、外貨建取引の円換算に用いる為替レートは、原則としてその取引日のTTMを使用します。ただし、継続して適用することを条件として、収益や資産についてはTTB、費用や負債についてはTTSの使用も認められています。
また、日々の取引の為替レートについては、取引日のレートのほか、取引があった週や月の平均レートを簡便的な方法として使用することも可能です。ただし、決算時の換算には決算日のレートを使用する必要があるため注意が必要です。
外貨建取引と消費税の取り扱い
海外との取引には消費税の取り扱いも関わってきます。特に、商品を輸入する場合の消費税計算には、外貨建取引特有のルールが存在します。商品を輸入した場合、原則としてその輸入品を保税地域から引き取る際に、消費税を税関に支払う必要があります。
このとき、課税標準となるのは、商品のCIF価格に関税額などを加えた合計額です。もしCIF価格が外貨建てで表示されている場合は、輸入申告日の週の前々週の為替レートの平均値として公示する「週間平均相場」を用いて円換算します。会計処理で使用する為替レートとは異なるレートを用いる点に、十分な注意が必要です。
為替リスクを回避する「為替予約」とは?
外貨建取引には、取引発生日から決済日までの為替レート変動によって損失が生じる「為替リスク」が伴います。このリスクを回避するための代表的な手法が「為替予約」です。
為替予約とは、将来の外貨決済に備えて、事前に金融機関と特定の日に特定の金額の外貨を売買する為替レートを約束しておく取引です。例えば、3ヶ月後に10万ドルの支払い義務がある場合、現在のレートで3ヶ月後の交換レートを予約しておけば、その後の為替変動の影響を受けることなく、支払うべき円貨額を確定できます。この予約したレートを「先物為替レート(FR)」と呼び、為替予約を行った取引の会計処理では、このFRを用いて円換算を行います。
まとめ
外貨建取引の会計処理は、グローバルに事業を展開する上で正確性が求められる業務です。特に、「取引発生時」「決済時」「決算時」の3つのタイミングで、それぞれ異なる為替レートを用いて円換算を行い、為替レートの変動によって生じる「為替差損益」を適切に処理しましょう。
自社での外貨建取引に関する会計処理が困難な場合は、EPCSの経理・会計・税務アウトソーシングをご活用ください。高い専門性を持ったプロフェッショナルチームが高品質かつスピーディにサービスを行いますので、安心してお任せいただくことができます。
