コラム

また、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象が拡大?

給与・社保・人事労務

昨年の7月に、「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」をテーマにしたコラムを執筆しました。

それから1年が経過したところでありますが、2025年(令和7年)6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」が成立しました。

今回は、この法律の中にある、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象の拡大の概要について、ご案内したいと思います。

現行の社会保険の加入対象

社会保険に必ず加入することとなるのは、適用事業所に使用される、正社員または正社員と比べて1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数がいずれも4分の3以上の従業員と以下の4つの条件を全て満たす短時間労働者です。

・従業員50人以上の企業等(2024年10月以降)で働く以下の短時間労働者

① 週の所定労働時間が20時間以上

② 所定内賃金が月額88,000円以上

③ 2ヶ月を超える雇用の見込みがある

④ 学生ではない

法改正後の社会保険の加入拡大のポイント

1.短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃

今回の改正により、企業規模要件を縮小・撤廃し、2.の賃金要件の撤廃もあわせて、短時間労働者が週20時間以上働けば、働く企業の規模にかかわらず、社会保険に加入するようになります。

改正の時期は、10年かけて段階的に縮小・撤廃することとしており、勤め先の規模によって変わります。

企業規模要件は、現在の51人以上の企業規模から、10人以下の企業まで、段階的に対象の企業が拡大されます。直近の企業規模の縮小は2027年10月、36人以上の企業が対象となります。

こちらの施行期日は2027年(令和9年)10月1日となっております。

2.短時間労働者の賃金要件を撤廃

いわゆる「年収106万円の壁」として意識されていた、月額8.8万円以上の要件を撤廃します。これにより、年収106万円の壁を意識せず、自分のライフスタイルに合わせて働き方を選びやすくなります。

撤廃の時期は、法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断します(最低賃金1,016円以上の地域で週20時間以上働くと、年額換算で約106万円となります。)。

先日の第71回中央最低賃金審議会にて、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられました。

仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,118円となります。この場合、全国加重平均の上昇額は63円(昨年度は51円)となります。

この場合、昨年度、全国で一番、最低賃金が低かった秋田県の最低賃金も、1,015円になるため、来年度には、上記の1,016円というラインを超える可能性が高くなりました。

こちらの施行期日は公布日から3年以内の政令で定める日となっており、遅くとも2028年(令和10年)6月13日には施行されることとなります。

3.個人事業所の適用対象を拡大

現在、個人事業所のうち、常時5人以上の者を使用する法定17業種(※)の事業所は、社会保険に必ず加入することとされています。

今回の改正では、法定17業種に限らず、常時5人以上の者を使用する全業種の事業所を適用対象とするよう拡大します。

ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外です。

※①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業

なお、常時5人未満の個人事業所は、現行と変わりません。

こちらの施行期日は2029年(令和11年)10月1日となっております。

おわりに

まだ1年ほど余裕があるかもしれませんが、事業主側としては、先を見据えた準備が必要になるテーマをご案内しました。短時間労働者の雇用契約状況や就業規則の見直しは、出来る限り早めにご対応いただく事をおすすめします。

EPコンサルティングサービス/社会保険労務士法人EOSでは、給与計算や労働・社会保険手続き、規則改訂サポート等、様々なご相談に対して対応させて頂いております。

サポートできることがありましたら、お気兼ねなく、お問合せ頂ければ幸いです。

角下 梨絵Rie Sumishita

HRソリューション事業部 マネージャー 社会保険労務士 社会保険労務士試験合格後、EPコンサルティングサービスに入社。現在、事業部のマネジ メントの他、外資系企業の給与計算、社会保険及び労務管理を中心に担当

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