コラム
iDeCoの改正
iDeCoってご存じですか?
昨年ここのコラムでNISAについて取り上げさせて頂きました。NISAとは一定の条件のもと、運用益に税金が掛からない制度で、2024年から新NISAとなり適用できる金額が大幅に増えて、とても使いやすい制度となったことをご紹介させて頂きました。今回はNISAとは違うiDeCoという制度についてお話をさせて頂きたいと思います。
iDeCoとは簡単に言うと、いくつかの税制優遇措置が施されている年金制度のことで、自己責任で毎月積み立て運用を行うことになります。iDeCoという制度自体は2001年からあるのですが、改正がされて加入できる人の範囲が拡大してきました。NISAには無いiDeCo特有の税制メリットもありますので(逆にデメリットもあります)、NISAをまだ始めていない方も是非このコラムを読んで頂ければと思います。
iDeCoの3つの税制優遇
iDeCoには次の3つ税制優遇措置があります。
① 掛金について全額所得控除を受けられる ② 運用益が非課税 ③ 年金受取時に退職所得控除または公的年金等控除が受けられる
まず①の掛金について全額所得控除を受けられるというのはどういうことかと言いますと、皆さんの給与の所得税を計算する時には収入-(給与所得控除+所得控除)=課税所得となり、この課税所得に税率を掛けた所得税を納めることになります。つまり所得控除の金額が大きければその分支払う所得税は少なくなります。所得控除というのは例えば生命保険料や医療費がこれに当たります。iDeCOの掛金もこの所得控除に該当します。しかも全額です!生命保険料は所得控除の上限額がかなり低く、たとえ100万円の生命保険料を支払っても4万円しか所得控除が取れないことが殆どです。一方でiDeCoの掛金は支払った全額所得控除を取れることになります。これは相当大きいです。
例えばiDeCoで毎月2万円の掛金を支払う場合、年額で24万円の掛金となります。仮に所得税率が10%だとすると(所得税は所得に応じて税率が異なります)、年税額で2万4千円の節税となります。また住民税率は一律10%なので住民税も年税額で2万4千円の節税となり、所得税と住民税を合わせて4万円8千円の節税となります!
②の運用益が非課税というのはNISAと同じで、iDeCoで支払った掛金の運用で増えた分(値上がり分や利息)に対しての税金はゼロとなります。このメリットも当然大きいです!
③の年金受取時に退職所得控除または公的年金等控除が受けられるというのはiDeCoでは受取時にも税金の優遇措置があるということです。iDeCoを受け取る時には「一時金」と「年金」とどちらで受け取るか選択することができます。また金融機関によっては両社の組み合わせが可能な金融機関もあります。
一時金として受け取るのであれば、退職金と同じ税金計算方法となります。退職金の税金は通常の給与と比べると大きな税制優遇があります。例えばiDeCoで20年運用した場合は40万円×20年=800万円までは税金がゼロとなります。またもしこの例で受取額が800万円を超えたとしても退職金の課税所得は1/2となる制度になっていますので税金は随分と少なくすみます。
年金として受け取るのであれば、公的年金等控除が適用されます。公的年金等控除額は収入や年齢に応じて控除額が変動します。65歳以上であれば手厚い控除額が設定されているので、iDeCoにおける税制メリットと言えるでしょう。
iDeCoのデメリット
iDeCoには次のようなデメリットと言える側面もありますので注意が必要です。
① 60歳になるまで投資したお金を引き出せない ② 投資なので元本割れのリスクがある ③ 手数料が発生する
まず①ですが、こちらが1番のデメリットと言えるかもしれませんが、iDeCoを始めると60歳になるまでお金を引き出すことができません。iDeCoはあくまで年金なので、NISAのように好きな時にお金を引き出すことができないのです。ですので無理のない範囲での運用が必要となります。
②の元本割れのリスクについては投資にはつきものなのである意味仕方のないものかと思っています。
③手数料についてですがiDeCoを行うにあたり加入時(初回のみ)と毎月一定額の手数料が発生します。この手数料は多額ではないのですが、毎月の掛金が少ないと負担割合も大きく見えますので、iDeCoってあんまりメリットないじゃないかって思うかもしれません。
また、デメリットではないのですが、注意が必要なのが、iDeCoの掛金は全額所得控除が適用され非課税で、運用益についても非課税ですが、受取時には原則課税されるといういわゆる課税の繰延べであり、永遠に非課税というものではないということです。但し、メリットのところでお話しさせて頂いたように、受取時に一時金として受け取った場合は、退職所得控除が適用されますし、年金として受け取った場合は、公的年金等控除が適用され、税制的には手厚い恩恵を受けることができます。
もう一つ注意が必要なのは、受取時に一時金としての受け取りを選んだとしても、年金としての受け取りを選んだとしても税金の計算においてはiDeCo以外の所得と合算されてしまうという点です。例えば一時金として受け取りを選んだ時に同じ年に会社からの退職金を受け取った場合は、iDeCoの一時金と退職金の合計金額から退職控除額を引いた金額に課税されることになってしまいます。
退職金とiDeCoの一時金の受け取り年が異なる場合は、退職金を先に受け取るのかiDeCoの一時金を先に受け取るのかでルールーが異なります。iDeCoを先に受け取った場合は、そこから10年以上空けて退職金を受け取ることになれば、iDeCoと退職金でそれぞれ退職所得控除が使えます。逆に退職金を先に受け取った場合は、そこから20年以上空けてiDeCoを受け取ることになれば、iDeCoと退職金でそれぞれ退職所得控除が使えます。つまり基本的にはiDeCoと退職金を同じ年に受け取るよりは、iDeCoを先に受け取って、そこから10年空けて退職金を受け取るのが一番税金が少なくなる方法となります。
実はこの“10年以上”というのは2026年1月からルールが改正となり10年以上となりました。改正前はiDeCoを先に受け取った場合は、そこから5年以上空けて退職金を受け取ることになれば、iDeCoと退職金でそれぞれ退職所得控除が使えていたのです。この改正は納税者にとってはかなり不利な改正となりました。iDeCoを受け取ってから10年以上経って退職金をもらうことは現実的にはかなり難しいと思います。Sくなくとも70歳までは働かないといけませんし、退職金をもらう時期を70歳にコントロールすることは相当ハードルが高いと思います。
iDeCoの掛金の金額
掛金の上限については実は人によって異なります。例えば自営業やフリーランスの人は月額6万8千円まで、会社員は月額2万3千円までという感じで人によって異なってくるのです。会社員の場合、勤めている会社に企業年金があるとか無いとかで掛金の上限が異なってくるのですが、細かい話になりますので今回は説明を割愛させて頂きます。会社員(企業年金無し)の場合、現行の制度では月額2万3千円が掛金の上限となっており、年間だと27万6千円まで運用することが可能となっています。
iDeCo改正
掛金につきましては自営業やフリーランスの人は月額6万8千円まで、会社員は月額2万3千円までと話しましたが、2026年12月からこの掛金が増額される予定です。特に増額幅が大きいのは会社員で月額上限2万3千円→6万2千円と3万9千円もUPされます!これは非常に大きいです。所得税率と住民税率の合計が20%の人の場合は、(3万9千円×12ヵ月)×20%=9万3600円も節税額が上がります!
あくまでも個人的な意見
2026年12月からiDeCoの掛金上限が引き上げられて節税効果が大きくなるので、iDeCoを始めた方が良いのではないかと思われる方もいらっしゃるかと思います。NISAの上限枠を全て使っている方で金銭的に余裕のある方、若しくはお勤めの会社に退職金制度が無い方はiDeCoを始められても良いのかなと思っています。NISAの上限枠を全て使っていない方はNISAの方が自由度が高いのでNISAの方が良いかも知れません。こちらは私ならそうするかなというあくまでも個人的な意見となります。

武田 哲尚Tessho Takeda
ACCTソリューション事業部 取締役事業部長 税理士 税理士法人EOS代表社員 2002年EPコンサルティングサービスに入社。国内事業会社・外資系事業会社・SPCの会計と税務を担当。
