コラム

要介護状態の判断基準とは?要支援との違いや介護休業の条件を一覧で解説

給与・社保・人事労務

ご家族の心身に変化が見られ、「もしかして介護が必要なのでは」と感じたとき、公的な支援制度の対象になるのか、仕事との両立はできるのかといった不安を抱える方は少なくありません。
特に「要介護状態」の判断基準は複雑で、どの程度の状態を指すのか分かりにくいものです。

この記事を読めば、介護保険制度における要介護度の目安や、介護休業を取得するための法的な基準を理解し、ご家族の状態がどの段階に該当するのかをご自身で大まかに判断できるようになります。

そもそも「要介護状態」とは?2つの制度における定義の違いを解説

「要介護状態」という言葉は、主に「介護保険制度」と「育児・介護休業法」という2つの異なる制度で使われており、それぞれ定義が異なります。
介護保険制度における要介護状態とは、身体上または精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部または一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態を指します。

一方、育児・介護休業法では、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態が要介護状態と定義されています。

【介護保険制度】「要支援」と「要介護」の判断基準にある決定的な違い

介護保険制度では、支援や介護が必要な度合いに応じて「要支援1・2」と「要介護1~5」の7段階、そして非該当(自立)に区分されます。
両者の決定的な違いは、サービスの目的にあります。
「要支援」は、現在は自立しているものの、将来的に要介護状態になる恐れがあり、生活機能の維持・向上を目的とした予防的な支援が必要な状態です。

対して「要介護」は、日常生活において常に介護を必要とし、心身の状態の維持や悪化防止を目的とした介護サービスが必要な状態を指します。
つまり、状態の改善や悪化防止を目指すのが「要支援」、現在の生活を支えるための介護が中心となるのが「要介護」です。

要介護認定はどのように決まる?2段階の判定プロセスを解説

要介護認定は、市区町村の職員などによる訪問調査と、専門家による審査会の2段階のプロセスを経て決定されます。
申請者の心身の状態を客観的かつ公平に判断するための仕組みが設けられています。
このプロセスを通じて、必要な介護の度合いが総合的に評価され、適切なサービス利用につながります。

ステップ1:訪問調査とコンピュータによる一次判定

まず、市区町村の認定調査員が申請者の自宅などを訪問し、心身の状態や日常生活の状況について本人や家族から聞き取り調査を行います。
調査内容は全国共通の基準で定められた74項目の基本調査票に記録されます。
この調査結果と、市区町村が依頼する主治医の意見書の内容を基に、コンピュータによる一次判定が行われます。

ここでは、1日に必要とされる介護サービスの時間を推計した「要介護認定等基準時間」が算出され、要介護度の仮の判定がなされます。

ステップ2:介護認定審査会による二次判定(最終決定)

次に、保健・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が、一次判定の結果、認定調査票の特記事項、主治医の意見書を総合的に審査します。
一次判定はコンピュータによる機械的な判断ですが、二次判定では個々の状況を考慮した専門的な見地からの評価が加えられます。

例えば、認知症の周辺症状や住宅環境など、基準時間だけでは測れない要素も勘案し、最終的な要介護度が決定されます。

【8段階別】要介護度ごとの心身の状態と認知症レベルの目安

要介護認定は「自立(非該当)」「要支援1・2」「要介護1~5」の合計8段階に分かれています。
ここでは、各段階における心身の状態や認知症のレベルについて、具体的な目安を解説します。

ご家族がどの状態に近いかを確認する際の参考にしてください。
要介護1から要介護4までの各段階は、必要な介護の量や種類が大きく異なります。

要支援1・2に該当する状態の目安

要支援1は、食事や排泄などはほとんど自力でできるものの、立ち上がりや歩行にふらつきが見られるなど、部分的な介助や見守りが必要な状態です。
掃除や身の回りのことの一部に手伝いが必要な場合があります。
要支援2は、要支援1よりやや生活機能が低下し、歩行や立ち上がりに支えを必要とすることが多くなる状態です。

食事は自力でできますが、金銭管理や服薬管理などで手助けが必要になることがあります。

要介護1に該当する状態の目安

要介護1は、食事はほぼ自立しているものの、排泄や入浴、着替えなどで部分的な介助が必要となる状態です。
立ち上がりや歩行が不安定で、杖や歩行器などの使用が考えられます。
認知機能の低下が見られ始め、物忘れや道に迷うなどの行動が時折見られることもあります。

問題行動や理解の低下がみられる場合もありますが、日常生活における支障は限定的です。

要介護2に該当する状態の目安

要介護2は、食事や排泄、入浴などの日常生活動作において、部分的な介助だけでなく見守りも必要となる状態です。
自力での立ち上がりや歩行には杖や手すりなどの支えが必須となります。

認知症の症状が進行し、金銭管理や服薬管理が一人では難しくなったり、ひどい物忘れや作り話、昼夜逆転などの問題行動が見られたりすることが増えます。

要介護3に該当する状態の目安

要介護3は、食事、排泄、入浴、着替えといった日常生活の多くの場面で介助が必要な状態です。
自力で立ち上がったり歩いたりすることが困難で、車椅子の利用が中心となります。

認知機能の低下が顕著で、時間や場所の認識が難しくなったり、問題行動が頻繁に見られたりします。
常時、何らかの介護が必要な状態と言えます。

要介護4に該当する状態の目安

要介護4は、介護がなければ日常生活を送ることがほぼ不可能な状態です。
食事や排泄、入浴など、ほとんどの動作に全面的な介助が必要です。
多くの場合、自力で体を動かすことができず、1日の大半をベッドの上で過ごします。

思考力や理解力の低下が著しく、意思の疎通が難しくなるケースも少なくありません。

要介護5に該当する状態の目安

要介護5は、要介護認定の中で最も重度な区分です。
日常生活全般にわたって全面的な介護が必要で、寝たきりの状態であることがほとんどです。
食事や排泄も自分ではできず、意思疎通も極めて困難な場合が多いです。

常に介護が必要であり、医療的なケアを要するケースも少なくありません。

【育児・介護休業法】仕事と両立するために知るべき「要介護状態」の定義

育児・介護休業法では、従業員が家族の介護のために仕事を休むことができる「介護休業」や「介護休暇」の制度が定められています。
この制度を利用するためには、対象となる家族が法律で定められた「要介護状態」にあることが必要です。
この法律上の定義は、介護保険制度の要介護認定とは基準が異なるため、たとえ要介護認定を受けていなくても、条件を満たせば介護休業を取得できる場合があります。

介護休業の対象となる「常時介護を必要とする状態」の判断基準

育児・介護休業法において、介護休業の対象となる「要介護状態」とは、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定義されています。
ここでのポイントは「2週間以上」と「常時介護を必要とする」という2点です。

一時的な体調不良などではなく、ある程度の期間にわたって継続的に介護が必要であることが条件となります。
この状態は、厚生労働省が示す具体的な判断基準によって判断されます。

【厚労省の基準】具体的な12の判断項目で家族の状態をチェック

厚生労働省は、「常時介護を必要とする状態」を判断するための具体的な基準を示しています。
以下の12項目のうち、2項目以上に該当し、かつその状態が継続すると認められる場合に、要介護状態と判断されるのが一般的です。

1. 座位を保つ
2. 自力で歩行する
3. 着替え
4. 食事
5. 排便
6. 排尿
7. 記憶
8. 意思伝達
9. 物を壊す・大声を出すなどの行動
10. 日常の買い物
11. 薬の服用
12. 金銭の管理

これらの項目について、家族がどの程度自立して行えるかを確認することで、介護休業の対象となるかをある程度予測できます。

人事労務の専門家が解説する介護休業申請における実務上の注意点

介護休業の申請をスムーズに進めるためには、いくつかの実務上の注意点があります。
まず、自社の就業規則を確認し、申請手続きや必要書類について把握しておくことが重要です。
法律では診断書の提出は義務付けられていませんが、会社によっては提出を求められる場合があります。

また、休業に入る前に、上司や人事担当者と十分にコミュニケーションを取り、業務の引継ぎや休業中の連絡体制について相談しておくことが、円満な休業取得と職場復帰につながります。
EPコンサルティングサービスのような人事労務の専門家は、こうした法的な知識と実務経験を基に、企業の労務管理をサポートしています。

要介護度で何が変わる?給付限度額と利用できる介護サービスの具体例

要介護度が決まると、それに応じて介護保険から給付される1ヶ月あたりの上限額(支給限度額)が設定されます。
要介護度が高いほど、より多くの介護サービスを利用できるよう、支給限度額も高くなります。
この限度額の範囲内であれば、自己負担1割(所得に応じて2割または3割)でサービスを利用可能です。

利用できるサービスも要介護度によって異なります。
例えば、特別養護老人ホーム(特養)への入所は、原則として要介護3以上が対象です。
また、福祉用具のレンタルや住宅改修費用の助成など、利用できるサービスの種類や範囲も要介護度に応じて変わります。

要介護状態の判断基準に関するよくある質問

ここでは、要介護状態の判断基準に関して多く寄せられる質問について、簡潔に回答します。

要介護認定の判断基準で、特に重視される項目は何ですか?

要介護認定では、日常生活における「直接的な介助の必要性」と「認知機能の低下」が特に重視されます。
具体的には、食事、入浴、排泄、着替えといったADL(日常生活動作)がどの程度自立して行えるかが大きな判断材料となります。

一度受けた要介護認定は、状態が変化すれば見直しできますか?

はい、可能です。
要介護認定には有効期間がありますが、期間の途中でも心身の状態が大きく変化(悪化または改善)した場合は、「区分変更申請」を行うことで認定の見直しができます。

かかりつけ医やケアマネジャーに相談の上、市区町村の窓口で手続きを行ってください。

介護休業を取得するための「要介護状態」に、医師の診断書は必須ですか?

法律上、介護休業の申請に医師の診断書は必須とされていません。
しかし、企業の就業規則によっては、対象家族が要介護状態であることを証明する書類として、診断書の提出を求められるケースが一般的です。
まずは自社の規定を確認することが重要です。

まとめ

「要介護状態」の判断基準は、「介護保険制度」と「育児・介護休業法」でそれぞれ定義が異なります。
介護保険制度では、専門家による2段階の審査を経て、心身の状態に応じた8段階の要介護度が決定されます。
一方、育児・介護休業法では、厚労省が示す12項目を基準に「常時介護を必要とする状態」であるかが判断されます。

これらの基準を理解することで、家族の状態を客観的に把握し、必要な公的支援や社内制度の活用に向けた準備を進めることができます。

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