コラム
ドイツ式vs日本式
私はドイツのものが好きである。ドイツパンの店でパンを買って朝食にし、ドイツワインを晩酌にする。自分の車は国産だが、ドイツ車に乗るとやっぱり良いなあ、といつも感じる。では会計ソフトもドイツが好きかというと・・・ちょっと躊躇ってしまう。
ドイツ式のERPシステムの会計ソフトを初めて使用した際に戸惑ったのは『伝票の修正が出来ない』ことだった。入力者が仕訳の貸借を入力しEnterキーを押し下げると伝票が成立し記帳されてしまう。もし伝票の内容に誤りがあれば、反対伝票を起票して当初伝票を取り消し、改めて伝票を起票する。これらはすべて帳簿へ記帳される。
それまでは日本式の会計ソフトを使用していた。伝票に誤りがあった時は当該伝票を修正し、OKになったら「承認」すると伝票が記帳される仕組みだった。どうして修正することが出来ないんだろう・・・ドイツ式の会計ソフトを使っている間、その疑問は消えることは無かった。
疑問の答えは、20年後に知ることとなった。「会計・監査ジャーナル」の記事だったと思うが、ドイツでは会計システムへの伝票入力は、帳簿への記入と見なしているので入力即記帳、もちろん修正は不可。ドイツの方が日本の会計ソフトの伝票入力では修正が可能であることを知って「それは改ざんではないか」と言ったというのである。
長年の疑問が氷解したのを感じた。会計システムへの伝票入力を帳簿の記帳と重ね合わせて、忠実にルールとして守る。ドイツ人は規律を大事にすると以前に何かの本で読んだ気がするが、まさにその通りだと感心した。日本の会計ソフトが伝票の修正可能なのは改ざんだと言われショックだった。そうだったのか。
でも、しばらくすると別の考えが浮かんできた。・・・手書き帳簿の記帳って、大概はボールペンで行うけれど、鉛筆で下書きして、OKなら上からボールペンでなぞったっていいよな・・・日本式の会計ソフトは入力時が鉛筆で記帳した状態、だから誤りが見つかれば消しゴム使って修正可、そして記帳OKとなったらボールペンでなぞる= 承認して帳簿へ記帳する。何だ、改ざんでも何でもないじゃないか!
どっちかが良くてどっちかがダメという訳ではないのだ。そうそう、今夜の晩酌は岩手の地酒にしよう、長年乗っているスバルは今回も車検に出そう。ドイツのものが大好きな私は、日本のものも大好きなのである。
幅舘 稔Minoru Habatate
ACCTソリューション事業部 マネージャー 公認会計士 事業会社在職中の2008年に公認会計士試験合格。 2011年公認会計士登録。同年EPコンサルティングサービスに入社。