コラム
年次有給休暇のい・ろ・は
2023年6月も間もなく終了し、7月を迎えようとしています。
2023年も、あっという間に半年が経過するとともに、最近では、気温も上昇し、日常生活を送るだけでも、疲れが溜まりやすくなっていると感じる方もいるのではないでしょうか。また、本格的な夏を迎えるにあたり、今年の夏休みはどのように過ごそうかと、計画を練っている方もいるのではないかと思います。しかし、「なかなか休みが取れないんだよね」という声も度々耳にしますし、ここでの「休み」は「年次有給休暇」を指しているケースが殆どだと思います。
一定の要件を満たすことにより、法律上の権利として付与される年次有給休暇。その年次有給休暇が一体どのようなものなのか等、今回は、基本的な事項について、見て行きたいと思います。
年次有給休暇の取得状況
先述の通り、年次有給休暇は、労働基準法に定める一定の要件を満たした場合に労働者の権利として発生するものですが、現状、年次有給休暇はどれくらい取得されているのか、確認してみたいと思います。
令和4年版厚生労働白書によると、令和3年の年次有給休暇の1人平均付与日数は17.9日、1人平均取得日数は10.1日、そして、取得率は56.6%となっています。この数字を見て、如何でしょうか。自分の会社の状況や自分自身の状況と比べて、高いとみるか、それとも低いとみるか。単純に数字だけを見ますと、必ずしも高い数字とは言えないのではないかと思いますが、平成29年は取得率49.4%と50%を下回る結果となっており、その後、毎年微増となり、令和3年で上記の結果となっております。
年次有給休暇発生のための要件
年次有給休暇を取得する権利はどのような場合に発生するのか。まずは、その点について見てみたいと思います。
年次有給休暇について規定している労働基準法39条を見ますと「全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した」年次有給休暇を与えなければならないとされています。
つまり、8割以上出勤していれば、年次有給休暇の権利は発生することになりますが、いつの期間で8割以上出勤していれば良いのか、ということになります。この期間ですが、最初は雇入れの日から6か月間、その後は6か月経過日からの1年間、そして、そこからの1年間という形で、最初は6か月ですが、その後は1年間という期間での出勤率を見て行くこととなります。
年次有給休暇はいつ取得できる!?
次に年次有給休暇は、いつ取得することが出来るのか、つまり、仕事のある日のみならず、いわゆる休日にも取得し、給与をもらうことが出来るのかということです。
そもそも年次有給休暇は、給与の減額を伴うことなく、労働義務が免除されるものとなります。そのため、労働義務が課せられている所定労働日に対して取得することが出来るものであって、労働義務のない会社の休日には、年次有給休暇を取得することは出来ません。
上記は、非常に分かりやすいケースとなりますが、産前産後休業や育児休業中の場合もその期間は労働義務が免除されていますので、年次有給休暇を取得することは出来ませんが、育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協力に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じることとなります(平3.12.20基発712号)。
年次有給休暇取得日の賃金
年次有給休暇を取得した日に対する給与ですが、法律上、以下のいずれかで支払うこととされています。
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常賃金
③健康保険法による標準報酬日額に相当する金額
多くの企業では、上記のうち、②で対応しているのではないかと思います。また、③を採用する場合には、労使協定の締結が必要となりますので、もし、既に③で対応している企業におきましては、労使協定が締結されているか否か、一度、確認をされると宜しいかと存じます。
取得できなかった年次有給休暇はどうなる!?
年次有給休暇は、その権利を使用出来るようになったときから2年が経過すると時効により消滅します。一方、冒頭の取得率を再度確認すると取得率は56.6%と約半分は使用出来ていない状況です。
このような未消化有休の取扱いについてですが、時効で消滅してしまう分、退職によって消化できない分を買取る企業もあります。これは、結果的に消滅してしまうものを買取るものとなり、必ずしも法違反になるものではありません。しかしながら、このような取扱いによって年次有給休暇の取得を抑制する効果を持つようになることは好ましくないとされていることに注意が必要です。
一方、当然のことながら、年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である(昭30.11.30基収4718号)とされています。
年次有給休暇に関するトラブル防止のために
今回は、「年次有給休暇のい・ろ・は」ということで、年次有給休暇に関する基礎的な事項について簡単に触れさせて頂きました。
年次有給休暇に関する労使トラブルを見ると、年次有給休暇を取得させてもらえない、付与日数が正しくない、退職時に何故か按分された、年次有給休暇を取得したら給与が減額されたというものが、多いように感じます。今回のコラムでは触れていませんが、労働者の時季指定権や使用者の時季変更権等の論点もあります。
一方、2019年4月の法改正(年間5日取得)により、年次有給休暇に対しする企業や人事担当者の向き合い方が変わってきているようにも感じます。EPコンサルティングサービスでは年次有給休暇に関する各論点について経験豊富なスタッフがサポート出来る体制を構築しているとともに、給与計算、社会保険手続きをワンストップで提供可能です。もし、気になることがございましたら、一度、お気軽にお声がけ頂ければと思います。

松本 好人Yoshito Matsumoto
HRソリューション事業部 取締役事業部長 特定社会保険労務士 社会保険労務士法人EOS 代表社員 法学修士、日本労働法学会所属 大学院修了後、栃木労働局での相談業務、横浜の社労士事務所を経て、EPCSに入社。
