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新年度への準備 2024年度人事労務のキーワード

Payroll accounting, social insurance, personnel and labor affairs

今年度も残りわずかとなりました。

2023年4月から2024年3月までの12か月間、皆様、いかがでしたでしょうか。

この1年、色々と新しいことにチャレンジ出来たという方もいれば、一方で、もっと頑張れたのではないか、と思う方もいるのではないでしょうか。

3月は、4月からの新年度を迎えるにあたり、この1年間を振り返ると共にこれからの1年に新たな希望を持ちスタートを切るための準備をする絶好のタイミングでもあります。

そこで今回は、人事労務と言う視点で2023年度を振り返ると共に、2024年のキーワードについて見て行きたいと思います。

2023年度の振返り

2023年度も人事労務という視点では、いくつもの法改正があり、各企業で対応されてきたかと思います。

以下では、2023年度の法改正のうち、重要なものを振返ってみたいと思いますので、対応が漏れていないか、今一度、確認してみてください。

1.中小企業に対する割増賃金率の適用猶予措置の廃止

まず、1つ目として「中小企業に対する割増賃金率の適用猶予措置の廃止」があげられます。

これまで大企業にのみ適用されていた月の時間外労働が60時間を超えた時間に対する割増賃金率(50%)が2023年4月から、中小企業にも適用されることとなりました。

この法改正により、給与計算システムにおける計算定義や勤怠の集計方法の見直しが必要となった企業もあるのではないかと思いますし、企業としてはコストアップにも繋がります。一方、月の時間外労働が60時間を超えることが無いように人員構成や人員配置、又は業務の実施方法を見直した企業もあるかと思います。

このような法改正を契機に、生産性向上を目指した社内の業務改善という動きを取るということは、従業員のモチベーションアップにも繋がる動きかと思いますので、法改正をマイナスに捉えるのではなくプラスに捉え、現状把握、課題抽出、改善そして定着というようなPDCAサイクルに持って行けることが良いのではないかと思います。

2.国外居住扶養親族の要件の見直し

2023年1月から国外居住扶養親族の要件が見直され、12月の年末調整時は新たな要件で国外居住扶養親族に該当するか否かの判断が必要になりました。これまでは年齢に関係なく「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要でしたが、30歳以上70歳未満の国外居住扶養親族に関しては、次のようになりました。

①留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者

→ 「親族関係書類」及び「留学ビザ等書類」+「送金関係書類」

②障害者 → 「親族関係書類」+「送金関係書類」

③その年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者

→ 「親族関係書類」+「38万円送金書類」

上記①~③のうち、③の「38万円送金書類」については、今まで明確な金額が定められていなかったため、従業員からの問い合わせも増えたのではないかと思います。

2024年度のキーワード

次に2024年度の法改正について、いくつかのキーワードごとに見ていきたいと思います。

1.労働条件の明示

既にお伝えしているところではありますが、4月から労働契約締結時等における明示事項に新たな項目が追加されます。

具体的には、①就業場所・業務の変更の範囲、②有期労働契約の更新上限の有無と内容、③無期転換申込機会の明示、があげられます。新たにこれらを明示することになるため、労働条件通知書をアップデートする必要が出てきますが、準備は完了しておりますでしょうか。 労働条件の正しい明示は、将来発生する可能性のある労使トラブルのリスクヘッジとなりますので、もし、対応が出来ていない場合には、早急に対応が必要となります。

2.定額減税

2月のコラム、3月のFirm Newsでもご説明等をさせて頂いておりますが、6月に源泉所得税と住民税について定額減税が実施されます。

源泉所得税については、6月の給与計算時の所得税について実施され(控除しきれない場合は翌月以降の給与からも控除)、住民税については、住民税の年度変わりである6月は控除されず、年税額から定額減税分を控除した金額を11分割して7月から翌年5月までの給与から控除されることとなります。

労働者の中には、「住民税は毎月控除されるもの」又は「6月から金額が変わるもの」と認識されている方もいると思いますので、6月の住民税については、簡単なアナウンスをされることが望ましいのではないかと思います。

3.社会保険適用拡大

次は、社会保険の適用拡大です。これまでも短時間労働者に対する社会保険の適用拡大は、順次、行われてきておりますが、2024年10月から、更に、その範囲が拡大されます。

現状、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で週20時間以上働く短時間労働者は、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となっていますが、10月からは厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。

そのため、被保険者数が51人以上100人以下の企業においては、短時間労働者の有無及び社会保険加入に関しての説明を実施する必要は生じてきます。

4.マイナ保険証

最後にマイナ保険証です。現時点では不確定かつ不明確な部分もありますが、2024年の秋以降、マイナンバーカードと健康保険証の一体化が予定されています。

健康保険組合等によっては、マイナ保険証についての取扱いや対応についてアナウンスがされているところもありますので、定期的に確認が必要になってくるかと思います。

おわりに

2023年度は、私個人にとって、今までにない経験を多くしてきた1年となりましたし、少なからず、昨年の3月とは違った状態であると感じています。

今回のコラムでは、2023年度と2024年度の法改正を中心に記載させて頂きましたが、2024年度は法改正へのサポートのみならず、企業が継続的に成長するためにどのようなサポートが可能なのか、しっかりと考えクライアントに対し提供して行きたいと考えております。

是非、些細なことでも気になることがあれば、人事労務のプロフェッショナルファームであるEPコンサルティングサービス及び社会保険労務士法人EOSにお気軽にお問い合わせください。

松本 好人

Yoshito Matsumoto

HR Team Manager/Team Leader Specified Social Insurance and Labor Attorney Master of Comparative Law, Japan Labor Law Association After graduating from graduate school, he was a consultant at the Tochigi Labor Bureau and worked at a social insurance and labor attorney office in Yokohama, then joined EPCS.

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